走り込みって必要?いらない? 注意点とは…元プロ野球投手・馬原孝浩さんと考える

西日本スポーツ

 元ダイエー、ソフトバンク投手で、現在はトレーナー業などで活躍する馬原孝浩氏(38)が体に効くメソッドを伝授する企画「馬原式」、第5回は「走り込み」を考えます。さまざまな活動が再開の動きを見せる中、新型コロナウイルス感染拡大の収束はいまだ不透明で、特に部活動は時間や場所が制限されること必至。効率よく練習するためには走るべきか、走らざるべきか?

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 走り込みは要、不要という議論があります。今回はランニング自体ではなく「競技における走り込み」についてです。年代や指導者によっても違うと思いますし、答えのない話になりがちですが、今回は「年齢層による」という考え方をお話ししたいと思います。

 神経系は6歳までに90%まで成長し、12歳ぐらいまでにほぼ100%になると言われています。大人になってから野球や、勉強を始めてもあまり体が動かない、頭に入ってこないのはそのためで、それまでにいろんなスポーツをやった方がいい。プロ野球選手に聞いても、例えば「小さいころから野球だけやってきました」という人はあまりいない。大抵はサッカーとかいろんなことをやってきたと言うし、僕もそうでした。

 いろいろな研究がありますが、子どもの神経系が大人に近いレベルまで一気に成長する「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期があり、次のように分類されています。

 3~8歳…プレ・ゴールデンエイジ 主に遊びでいろんな動作や、バランス感覚を身につける時期。布団の上でのでんぐり返りに始まり、木登りなども。

 8~11歳…ゴールデンエイジ 小さいころに運動神経を高めておくことで、見よう見まねでできるようになる「即座の習得」が可能になる時期です。いろいろな動作を組み合わせて、実践的な練習に入っていきます。野球のノックなら例えば逆シングル、ショートバウンドの処理などです。

 11~14歳…ポスト・ゴールデンエイジ それまでに習得した動きの強さ、精度を高めると同時に、心肺機能がぐんと伸びるので短・中・長距離、強弱とバリエーションを持たせながら、この時期に追い込むのが最も効率が良いです。

 僕自身は、中学の野球部がスパルタ式で、朝の4時に集合してトイレ掃除から始めて夜11時に帰っていました(笑)。当時は「とにかく走れ!」の精神論。オーバーワークでしたが、時期的には良い面もあったのかもしれません。

 成長具合により個人差はありますが、年齢に合わせてやることも見えてくる。むやみやたらと小学生に走らせるのは考えものというのが分かると思います。

 では、ポスト・ゴールデンエイジ以降のランニングは何を考えるべきか。全身運動とはいっても、みんな走り方や、体のつくりも違うので、一概にランニングが有効とはいえません。走り込みを競技につなげている人は、例えば“アウターマッスルが疲れて使えなくなったとき、インナーマッスルが使えてくる”というような、バランス良く筋肉を鍛えられる感覚を持っているのだと考えられます。

 それが分からないうちに走っても、やらされるだけなので伸びづらいわけです。僕自身も言い聞かされてきたことですが「誰よりも走った」「どこよりも走った」ことが自信につながる、という考え方もあります。全員がそう思えればメンタルトレーニングにはなるでしょうが、むやみな走り込みは時間の無駄です。

 ではこの年代のランニングの目的は、一つはウオームアップ。ゆったり走っても10分、スピードを上げれば5、6分で汗が出てきて、体は温まります。もう一つはクールダウン。個人差はありますが15分前後も走れば血の巡りが良くなって酸素が行き渡り、乳酸除去が始まって疲労回復が早まる。それ以上は減量にしかならないとも言われます。

 だから「とりあえず30分走ってこい」は精神論になってしまう。こういうことを学ぶ勉強会があるといいし、指導者の資格もあった方がいいと僕は考えています。

 競技力向上のためのランニングとは何でしょうか? 現役時代、走るのが苦手な選手が同僚にいました。ある年、陸上競技のトレーニングでぎこちなかったランニングフォームが改善し、足が速くなって身体能力も格段に向上しましたが、残念ながら競技の成績には結びつきませんでした。

 競技にもよりますが、野球で言えば必ずしも、走り込む=パフォーマンスが向上するということではなさそうです。ランニングを競技の動きに結びつけるなら、例えば障害物を置いて足を上げたり、跳んだり、股を割ってハードルの下をくぐり抜けたりと、他の動きを同時に行う「コーディネーショントレーニング」を行うべきでしょう。

 一概に「走れ」「走るな」という話ではなく、年代や、もっと言えば個々の成長に合わせ、練習の中でランニングのバランスを考えるべきだと思います。例えばプレ・ゴールデンエイジの後、技術練習や筋トレに使いたい時間を考えると、それほどランニングに時間は割けないはずです。

 走り込みと同じようなことが「投げ込み」にも言えるでしょう。高校野球にも球数制限のルールができましたが、次回は投げる量をどう考えるべきか、お話しします。(随時公開)

 ◆馬原孝浩(まはら・たかひろ)1981年12月8日、熊本市生まれ。熊本市立(現必由館)高から九州共立大を経て自由獲得枠で2004年ダイエー入団。05年途中から抑えに。06、09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表。ソフトバンクから13年にオリックスに移籍し、15年限りで引退。通算385試合登板で23勝31敗、防御率2・83、歴代8位の182セーブ。その後、柔道整復師とはり師、きゅう師の資格を取得。昨年9月からMTA(Mahara Trainer Academy)代表としてアスリートのサポート、トレーナー育成、セミナー、講演を中心に活動。右投げ右打ち。182センチ、80キロ。

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