劇勝発進ソフトバンク「2番栗原」の背景 西武との差から工藤監督が導き出したこと

西日本スポーツ 倉成 孝史

 ◆ソフトバンク2-1ロッテ(19日、ペイペイドーム)

 野球で一喜一憂する日々が帰ってきた。V奪回を目指すソフトバンクが2年連続サヨナラ発進だ。今季限りの特例で打ち切りとなる延長10回、初の開幕スタメンで2番に起用された栗原陵矢捕手(23)が2死からV打。工藤監督が繰り出した「攻撃型オーダー」が土壇場で機能した。史上初の無観客で始まった異例のシーズン。大きなダメージを受けた国内スポーツの先陣を切って、プロ野球が力強い一歩を踏み出した。

■全得点に絡む2安打

 新星が、決めた。延長10回2死三塁。あと1死で引き分けに終わる土壇場で、追い込まれた栗原が小野の4球目ストレートを中前へはじき返した。3カ月も待ち続けたシーズンの幕開けは、劇的すぎるサヨナラ勝ち。本来なら一塁ベース上で派手にもみくちゃにされる場面だが、栗原はベンチ前に出てきたナインと、距離を取りながら満面の笑みで「エアハイタッチ」を繰り返した。

 「最後は自分で何とかしてやろうと思って打席に入った」。ヒーローがそう振り返った劇打。簡単に追い込まれながら3球目のフォークに何とか食らいつきファウルで粘り、直後の球を仕留めた。プロ6年目にして初の開幕スタメン。ベンチの期待に気迫で応えたスイングは、大事な開幕戦で昨季チームが大の苦手としたロッテを下す、まさに値千金すぎる一打となった。

 「よくぞ打ってくれた。こういう状況でなければ抱きしめてあげたい」と、孝行息子の大仕事を誰よりも喜んだのは工藤監督だ。6月の練習試合では一度しかなかった2番での起用を大事な開幕戦で決断。試合前、ただでさえ緊張で顔がこわばっていた新星に「楽しめ。俺が責任を取るから」と声を掛けた。1、2打席目と連続で三振を喫するなど、3打席目までは無安打。それでも互いに無得点の8回に1死から上林が二塁打で出塁すると、栗原は今季初安打となる左前打でつなぎ、柳田の先制犠飛につなげてみせた。

 3年ぶりのリーグV奪回を目指す「20年型工藤ホークス」に欠かせないピースだ。ペナントを逃した昨季は、本塁打数はリーグトップの183本ながら582得点は4位。トップで756得点の西武に174点もの差をつけられたことで、オフに戦い方を洗い直した指揮官が導き出した答えは「つながりのある打線」だった。6月の練習試合では、12戦で12通りの打順をテスト。V奪回を目指すチャレンジャーとしての「簡単にバントはしない攻撃的な打順」を可能にするピースが「2番栗原」だ。

 相手先発の石川も好投しロースコアのゲームとなったが、その新星は得点したイニングでいずれも快音を響かせ初戦から見事に指揮官の期待に応えた。史上初の無観客公式戦。劇的すぎる幕切れでもスタジアムが沸くことはなかったが、指揮官には割れんばかりの大歓声が聞こえたはずだ。

 「新しい力が、ホークスに芽生えたことを(映像で)見ていただけたんじゃないかと思うと、うれしい。1試合終わっただけですがいいスタートが切れた」。イキの良すぎる新星が、V奪回への大きな大きな白星をもたらした。 (倉成孝史)

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