来春閉校の県立高校 1人だけの水泳部員、寂しかったはずのプールが…

西日本スポーツ 佐藤 雄太朗

 新型コロナウイルスの影響で今夏、さまざまな競技大会が全国規模で中止に追い込まれ、晴れの舞台を失った高校スポーツ界。各競技団体などがそれぞれ工夫を凝らし、独自の代替大会が準備・開催される中、特別な思いで部活動に汗を流す高校生アスリートがいる。来春閉校する宮崎県立都農(つの)高(梅津政俊校長、72人)の生徒たちだ。コロナ禍に見舞われる中、“高校生活最後の試合”に臨む姿をカメラで追った。 (写真と文・佐藤雄太朗)

 水温約23度。水の中に入るにはちょっと勇気が必要になる。「楓恋(かれん)はこの冷たい水を耐えて泳いでいる。すごいな」。山口宗英顧問(58)がそう呼びかけると、黒木楓恋(18)はいつも「やればできる」と“その気”になった。大好きな水泳の時間が、今日も始まる。

 水泳を始めたのは3歳。中学には水泳部がなかったため中断し、さらに都農高にも水泳部はなく何をしようか迷ったという。そんなとき、山口顧問が水泳部を立ち上げる話を聞き、心が躍った。

 入部当初は2年生の先輩と2人だったが、今年は山口顧問と二人三脚で練習に打ち込む。「プールの独り占めはうれしいけど寂しくなる。学校の休校と同じかも」

 新型コロナウイルスによる臨時休校期間は「人と会えず、つらかった」という。友達との再会を果たすと「学校が本当に楽しい。だから、この好きな場所が閉校し、なくなるのがやりきれない」と感じた。

 水泳部の練習も再開すると「私一人のためにプールの準備をして、練習に付き合ってくれる」との思いが増し、山口顧問との向き合い方に「恵まれているな」という気持ちになった。

 高校総体県予選の代替大会は19日だ。自由形50メートルと100メートルに出場し、「得意の50メートルで34秒を切ろう」と目標を決めた。「ちょっと背伸びかな。だけど、やれる気がする」。自然と笑みがこぼれた。

 放課後のプールに夕日が反射し、水面を黄金色に染めた梅雨の中休み。「都農高に来て成長したことをタイムで示したい」と、意気込む黒木がいつまでも泳いでいた。

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 ◆宮崎県立都農高 1952年に県立高鍋高都農校舎として発足し55年から都農高。2000年代に入り少子化が続き、16年に高鍋高との再編統合が決定、21年春に閉校する。現在の全校生徒は3年生のみ72人。体育系の部活は男子バスケットボール部、バドミントン部、水泳部、剣道部、空手道部。所在地は宮崎県都農町川北4661。

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