九鬼まで使って甲斐を外した工藤監督 かつての発言から読み解く真意

西日本スポーツ 石田 泰隆

◆タカ番記者コラム「好球筆打」

 ◆日本ハム5-3ソフトバンク(5日、札幌ドーム)

 打てる捕手の誕生か。いや、一発打っただけで持ち上げるのはよろしくない。担当記者の悪いところでもある。捕手は打つことと並行して、守備面、投手のリード面での働きも求められるだけに、まだまだ慎重に見定める必要がある。

 とはいえ、九鬼の放ったプロ初本塁打は完璧な一発だった。着弾点は広い札幌ドームの左翼席中段だ。ホークスの捕手であれだけの飛距離が出せるのは、かつて「打てる捕手」でならした城島球団会長付特別アドバイザーを想起させる一発ではなかったか。試合にも勝てば、二重の喜びとなっていたことだろう。本塁打を打っていただけに、9回の打席も見てみたかった。

 一方、こちらはどんな思いで後輩のダイヤモンド一周を眺めていたのだろうか。正捕手の甲斐だ。今季は開幕のロッテ戦(ペイペイドーム)から痛恨の一発を浴びるリードが目立ち、前カードの西武戦(メットライフドーム)でも課題を克服できず。ついには3日の日本ハム戦からベンチを温める控えに回った。

 今季初のベンチスタートとなった3日の試合前、工藤監督は甲斐の先発落ちについて「切り替えも含め、ヘッドコーチ、バッテリーコーチとも話をして。打たれたからダメではなく、きちんと向き合っていけるようにやっていこうと話はした」と説明していた。

 だが、先発落ちを境に、甲斐は途中出場の機会すら与えられていない。過去2試合は投手陣からの信頼が厚い高谷が先発。ベンチで見て学ぶことも多かっただろうが、この日はついに後輩の九鬼にまで先発マスクの座を譲ってしまった。これは甲斐本人にしてみれば、不本意でしかないだろう。

 ただ、今回の捕手起用を見て思い出したことがある。工藤監督就任1年目のことだ。秋山前政権時代からのリーグ2連覇を達成した指揮官は、こう言っていた。「人間、何が一番動くと思う? 怒りだよ。違う選手が活躍したら『何くそ』ってなる。そういう思いが大きなエネルギーを生む」。選手の心理を逆手に取った工藤流の人心掌握術だ。

 もちろん、指揮官の狙いがどこにあったかは定かでないが、戦況を見つめることしかできなかった甲斐の心は「何くそ」の思いであふれ返ったのではなかろうか。表情を曇らせているだけではだめだ。高い守備力は言うに及ばず、打力も年々向上している。このチームの扇の要は、甲斐抜きには考えられない。「何くそ」の思いでやり返してほしい。 (石田泰隆)

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