甲子園への秘密兵器になるはずだった 最後の夏をざわつかせる「両投げ投手」

西日本スポーツ 前田 泰子

 プロでも珍しい左右両投げの高校生投手が福岡にいる。2年前に甲子園に出場した折尾愛真の渡辺隼士(3年)は本来左投げだが、マスターした右投げでもマウンドに上がるスイッチピッチャーだ。2年ぶりの甲子園出場を目指すチームの「秘密兵器」になるはずだったが、コロナ禍で全国高校野球選手権は中止となった。甲子園の夢はなくなったが、18日に開幕する「がんばれ福岡2020 北九州市内高校野球大会」でチームメートとともに優勝を目指す。

   ◇   ◇   ◇

 「二刀流」といっても投打の二刀流とは訳が違う。折尾愛真の渡辺は左右両方で投げる二刀流だ。「この夏の秘密兵器だったんですが」。奥野博之監督は希少な両投げ投手を3年ぶりの甲子園出場への「切り札」にするつもりだったことを明かした。

 長く投げてきた左は最速127キロ。「ホークスの嘉弥真(新也)選手をお手本にしています」というスリークオーターの技巧派だ。昨秋から取り組む右は横手投げで110キロ台中盤だが「制球がいい」と奥野監督。渡辺は「今は右の調子が良くないけど、調子が上がれば夏の大会で投げられるかも」と両投げで登板する機会を狙っている。

 練習試合で両投げを披露すると必ず相手ベンチがざわつくという。コロナ禍で野球部の活動ができず両投げのグラブを作れなかったため、左用は自前だが右用はチームメートから借りている。左から右に変わるときはベンチからグラブを持ってきてもらうが、左投手が右投手に変身する姿を見た相手ベンチからは「エッ、交代じゃないの」と声が聞こえてきたこともある。投球練習はできないため「けん制を入れて感触を確かめます」と独自の工夫をしている。

 日常生活は右利き。もともと右で投げていたが小2で少年野球チームに所属すると、監督から突然「左投げにしろ」と言われ、訳が分からないまま左投げの練習を始めた。「本音は右で投げたかった」と言いながら、小6になると左投手として地域の選抜チームに入るほど実力をつけた。

 中学の野球部でも左投げだったが中2の秋に左肘の靱帯(じんたい)を痛めると、監督から「もともと右投げだし、右で投げてみろ」と言われ今度は右投げを練習。「右で投げるとバランスが崩れてしまう」との理由から、肘が治った中3の夏は左投げに戻した。

 左一本でいくつもりだった高校でも転機が訪れる。昨秋の大会後、奥野監督から「右投げ指令」が出た。冬はブルペンで右で投球練習し、打撃投手を右で行って感覚を磨いた。スライダーとシュートも本で勉強してマスター。「左は思い切り投げて、右は制球に気をつけて丁寧に投げる」。慎重に取り組んだ結果、今では両投げに自信が持てるようになった。

 今後もスイッチピッチャーとしての道を進むつもりだ。卒業後は広島市の医療専門学校で野球を続ける。「監督からも両投げを続けろと言われているし、自分もこのままやっていきたい」。誰にもまねできない技で勝負していく。(前田泰子)

PR

高校野球 アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング