また球場のスタンドに立てる日まで…「売り歩かない」売り子の今

西日本スポーツ

 無観客で開幕したプロ野球に人数制限付きながら観客が戻り、23日で2週間となった。もっとも新型コロナウイルスの感染者増加を考慮し、サッカーJリーグは8月1日からの観客数の上限引き上げを見送り。プロ野球でも同様の動きが広がっている。

ソフトバンクの本拠地ペイペイドームでは、感染予防の観点からアルコール販売を特設ブースの売店数カ所に限っている。営業は6回終了、遅くとも試合開始2時間後まで。ビールの売り子たちはスタンドから姿を消したままだが、数人がここで販売に携わる。アサヒビールでは通常、1日80~100人が売り子として働くが、現在は6人が売店に立つのみだ。

 「就活中に無観客になって…。(アルバイト)4年間の最後の年に売り子ができない。悲しかったです」。売り子のいずみさんは地元福岡の大学4年生。テレビ番組の売り子特集で華やかさに引かれた。「頑張った分、返ってきます」とやりがいを語る。1日200杯、売ったこともあった。

 山がちな自宅近くの階段を走り込み、オープン戦に備えていたが、やがて無観客が決定。売り子たちには当面、業務がない旨が、一斉メールの業務連絡で告げられた。

 専門家チームからの提言の中には、売り子の感染リスクの指摘もあった。理屈では分かっていても、ニュースで見て「ショックでした」と言う。開幕延期。無観客開幕。売り子の業務再開につながらない業務連絡が続いた。仲間内のグループメッセージで「いつまでこのままなんだろう」「いつ始まる?」と飛び交う声。そもそも、本当に始まるのか、というトーンにもなっていった。

 有観客となり、スタンドに売り子の姿が戻った球場もある。だが、ペイペイドームではまだ先。現在は経験や実績のある、ごく一部の売り子に声がかかり、売店に立つ。

 新しくなったユニホームがようやく日の目を見た。普段と違い、売れ行きは評価につながらないが、常連客に「買いに来るからね」と声を掛けてもらい、やりがいを再認識したと言う。手指の消毒や検温はもちろん、フェースシールドにマスク、手袋着用と異例の状況は続くが、全ては平穏に近づくためだ。

 感染者数の増加で、現状から大きな進展は望みにくい状況。むしろ後退への覚悟も求められる。努力の甲斐あって企業から内定を得たいずみさんだが、あらためて集大成の景色を夢見る。「野球のシーズンが続き、一日も早く以前のような観戦風景が戻ることを願っています。今までお世話になったお客さん、皆さんにお礼を伝えたい」と話した。

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