1年後は30歳 現役続行決めた五輪メダリストの葛藤「まだやってるの?」「見てなさいよ」

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 東京五輪開幕まで23日であと1年となった。2012年ロンドン五輪で計3個のメダルを獲得し、16年リオデジャネイロ五輪にも出場した競泳女子平泳ぎの鈴木聡美(ミキハウス)=福岡県遠賀町出身=は20年の東京五輪、21年に開催予定だった世界選手権福岡大会への出場を目標に掲げてきた。来年1月に30歳。五輪の1年延期で引退も頭をよぎったが、挑戦を続ける道を選んだ。

 ふとした瞬間、鈴木は自分自身にあえて「アンチコメント」をふっかけるという。「まだやっているの? もう引退じゃないの?」「いい年齢なんだし」-。「頭の中で『じゃあ見てなさいよ、やってやるよ』と言い聞かせるんです。(自分の中に)悪魔と天使がいるみたいな…」。悲観的な言葉を並べることで湧き上がった反発する気持ちを練習への意欲に変える。

 1年延期によって30歳で五輪イヤーを迎える。ピークの早い競泳女子に、30歳以上で五輪の舞台に立った選手は日本にいない。拠点の山梨学院大のプールが使えず、外出自粛も続いた春先、何度も恐怖がよぎった。

 「最悪、このまま私は引退しなければいけないのかな…。来年開催されなかったら、将来的なもの何も考えられていない。この先大丈夫なのか」

 昨年は世界選手権の代表を逃し、今年も低調な結果が続いていた。延期に対して「ホッとした。立て直す時間が増えた」というのが本音だ。それでも、1年先に調子が戻る保証はない。不安になると、自分の中に「天使と悪魔」を登場させて奮い立たせてきた。

 5月にプールでの練習を再開し、フォーム修正にも取り組む。理想は銀1個、銅2個のメダルを獲得した12年のロンドン五輪。近年ではパンパシフィック選手権とアジア大会で表彰台に上がった18年の泳ぎだ。「上から見ると水をなでているようななめらかな動きだけど、体は前に進む感じ」と説明する。

 18年後半、スピードアップを目指して腕のかきを重視したことでバランスが崩れた。これが不調の原因と分析。以前の泳ぎに戻すことを決めた。練習後の回復力の衰えは感じるものの、トレーニングで筋力的な数値は上がっている。「体は全く問題ない」と言い切る。

 「一番大事なのは私の気持ち。やりたいのか、もう十分なのかが一番大きな鍵になってくる。やれるだけ挑戦したい」

 爽やかな笑顔で日本中の注目を集めたロンドン五輪から8年。「ロンドンをどこまで超えられるか。今後も葛藤する場面があると思うけど、今はとにかく自分の力を信じる」。迷いながらも、歩み続けていく。(伊藤瀬里加)

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