コロナで厳しい目「公園に自粛警察がいる」先の見えないアスリートのメンタルに専門家が警鐘

西日本スポーツ

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う東京五輪の1年延期を受けて、選手たちは葛藤を抱えている。専門家や関係者は、練習環境の変化や五輪開催の不透明感が背景にあると指摘する。共同通信社の7月の世論調査では五輪再延期や中止を求める声も7割を超える。社会の賛同や共感も得た上で、選手たちが心身ともに万全な形で晴れ舞台を迎えるにはどうすればいいのか-。

 「公園で走ろうと思うけど“自粛警察”がいる。人の目が気になるので十分に練習できない」。緊急事態宣言中、国立スポーツ科学センター(JISS)心理グループの立谷泰久先任研究員はそうした嘆きの声が選手にあることを現場を通じて聞いた。

 コロナ禍は収束どころか再び拡大している。感染を警戒したバドミントンやレスリングなどの日本協会は7、8月に東京・味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で予定していた代表合宿を取りやめた。

 バドミントン元日本代表で2008年北京、12年ロンドンと2大会連続で五輪に出場した池田信太郎氏(福岡県岡垣町出身)は「選手は期限を決めて目標を計画的に設定する。先が見えないと、どう取り組めばいいのか不透明になる」と選手たちをおもんばかる。

 1年延期が与える身体的影響も少なくない。日本臨床スポーツ医学会と日本スポーツ医学財団の理事長を務める松本秀男氏は「特に瞬発力が必要な競技は年齢を重ねるにつれて筋力が低下する」と指摘。さらに精神面の不安を取り除く重要性も訴える。「コロナの対策も見えず、五輪を開催するかどうかも分からない中で下がっているモチベーションをどうするか」

 立谷先任研究員は14年ソチ冬季五輪のジャンプ男子チームに同行。普段の練習と同じ準備と心境で当時41歳の葛西紀明がラージヒルで銀、団体で銅を取った事例を引き合いに「いつもと変わらない環境づくりが大事。不安を聞き、何ができるか一緒に考える依頼が増えるかも」と覚悟する。

 選手たちが社会の共感も得て練習に打ち込める環境づくりのため、東京五輪大会組織委員会の委員でもある池田氏は開催意義の見直しの必要性を唱える。「在宅勤務のストレスや運動不足の解消もスポーツが果たす役割。社会における役割を明確にすれば五輪も必要と思われるのでは」

 日本臨床スポーツ医学会が募り、五輪の選手村でボランティア活動をする予定の医師は約130人。1年延期が決まっても再希望者が相次ぐ。松本氏は「五輪はスポーツ医学についての知識を世間に伝えるチャンス。五輪を経験した医師が地元で国民に還元するのも大きな意義になる」。東京五輪の実現へ、周りで支える人たちも努力を続ける。(末継智章)

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