日本ラグビーにとっての野茂、カズだった 活動休止「サンウルブズ」の遺産と課題

西日本スポーツ 大窪 正一

〈記者コラム〉

 昨秋のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に向けた日本代表強化の柱として発足し、世界最高峰のスーパーラグビー(SR)で5季戦ったサンウルブズのメモリアルセレモニーが8日に東京都内で開催される。歴代キャプテンのトークショーなど、これまでの歩みを振り返る締めくくりのファン感謝イベントだ。

 SRからの除外が既に決まっていたラストイヤーの今季は参戦初の開幕戦勝利を挙げたが、コロナ禍で3月に中断し、そのまま活動終了と寂しい幕切れになった。5季の通算戦績は9勝58敗1引き分け。勝負の観点だけでいえば、決して「成功」とはいえないだろう。運営面を含めさまざまな課題があったのも事実。しかし、チームが残した功績は多大だと思っている。

 最近になって日本代表が脚光を浴びだしたが、誤解を恐れず言えば、過去の日本は大学ラグビーが人気の頂点だった時期が長かった。国内で完結しファンが世界のラグビーに向ける目はあまりなかった。そこを切り開いたのがサンウルブズだ。シーズンを通して世界レベルで戦える舞台を提示した。国内の試合では2万人近い観客を集めるチームでもあった。

 ファンは世界トップレベルのラグビーの魅力を知り、これまでとは違う客層も生まれた。一度開いた世界の扉。もう閉じることはできない。

 野茂英雄氏が日本人の米メジャーリーグ挑戦の道を切り開いたように。彼がいなければイチロー氏のシーズン最多安打記録や松井秀喜氏がヤンキースで4番を張ることも、メジャー情報があふれることもなかったはずだ。

 サッカーも同様だ。Jリーグ発足翌年の1994年、カズこと三浦知良がジェノアに加入し、アジア人初のセリエA選手となった。その後、中田英寿氏もイタリアで活躍。世界のサッカーを知るファンが増えることで国内のサッカー人気も揺るぎない地位を築いた。

 スケールやインパクトは違えど、日本ラグビー界にとってそうした「パイオニア」がサンウルブズではないか。W杯ブームで「にわか」ファンが増え、層の広がりとともに確実にファンの目も肥えた。世界に通じる道を確保し続けることは今後、野球やサッカーのような国民的スポーツへと発展できるかの喫緊の課題とも思う。

 トップリーグを発展的解消して2022年発足予定の新リーグをいかに生かすか。コロナ禍によって、SRも再構築の道を歩むとみられ、「国際カレンダー」が変わる流れも濃厚だ。こうした状況変化の中で「世界の舞台」をどうやって確保するか。強化方針とベクトルを合致させながら、W杯で関心を持ったファン層を満足させられるか。サンウルブズが残した確かな足跡。この価値を改めて見つめ直したい。(大窪正一)

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