「ウノゼロ」3連勝中のアビスパ 監督の言葉から読み解くイズムと課題

西日本スポーツ

【アビスパ取材20年超 ライター・島田徹コラム】

 4戦負けなしと好調のアビスパ福岡がコロナ禍に見舞われました。新型コロナウイルスのPCR検査で陽性の疑いが強い選手が出て、2日のアウェー大宮戦が中止。その後、前寛之主将(25)の陽性判定が発表されました。幸いにも広がりはなく、8日のホーム甲府戦は開催予定でチームは動きだしています。アビスパ取材歴20年以上のフリーライター島田徹氏(55)のコラム「“福岡”を語ろう」第2回では、まだ複数得点のない攻撃面について取り上げました。

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 選手1人に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性の疑い(その後陽性と判明)が出て、第9節の大宮戦が突然中止となり、驚いた方も多いと思います。チームにも動揺が走ったようですが、長谷部監督や選手は既に8日の甲府戦へ心身のコンディションアップと勝ち点獲得に意識を集中しています。いいゲームを期待できるでしょう。

 さて今回は攻撃の現状と今後がテーマです。第5節・磐田戦からの「ウノゼロ(1-0)」、無失点3連勝に表れるようにアビスパの堅守は光っています。8試合トータルの失点数は6。1試合未消化とはいえ、22チーム中4位タイの少なさです。プロでは1試合平均の失点1・0以下を目標とすることが多く、今の0・75点は高く評価できます。前回のコラムでも触れたように、個人でなく組織として戦う長谷部イズムの一つを体現した上での成果です。

 一方で得点は、やはり1戦未消化ながら、下から4番目の7。まだ複数得点がありません。長谷部監督は「試合ごとに状況は良くなっている」と話しますが、あと一押しが足りないのも事実。それは何でしょうか。長谷部監督は1-0で制した第7節の岡山戦後にコメントしました。

 「大事なところでピシッとつながるような、メッセージのあるパスやボールの運び方などを、チームとして磨いていきたい」

 守備と同様に相手ゴールに向かうエネルギーを組織的につくりだす作業の質の向上が必要だという意味でしょう。

 ここで、守備の組織づくりがうまく進行しているのに攻撃面で思わしくないのはなぜか、と疑問が生まれます。監督にはまず守備組織からつくり上げる方もいます。ならば攻撃で成果が出ることに「時差」が生じるのも理解できますが、長谷部監督は守備と攻撃を並行して構築すると明言しています。

 鍵となるのが、長谷部イズムの中には「組織」と同様に重要な「個性」というワードがあること。長谷部監督は各選手に「それぞれが持つ個性をチームに提供してください」と伝え続けています。足は速くないがテクニックがある。ドリブルはうまくないがパスがうまい。裏へのフリーランは少ないが狭いスペースでボールを受けるのがうまい。そういう個性が得点率の高い好機創出につながり、決定力を上げる要素になるのです。ただし、個性を主張すればよいというわけではなく、あくまでも組織の中で生かす。長谷部監督の「チームに提供」という言葉の真意はそこにあると思います。

 個性を発揮する重要性を理解するとは、自分以外の個性も理解し、組織力に昇華させるという意味です。言葉にするだけで難しい作業。だから時間を要する。それが攻撃の現状につながっているのでしょう。価値ある難題への挑戦を、皆さんにも追ってほしいです。(随時公開)

 ◆島田徹(しまだ・とおる)1965年3月28日生まれ。広島県出身。小学5年から福岡大1年までサッカーを行い、ボランチやサイドバックを務める。98年からサッカー専門誌の編集部に勤務し、アビスパの取材も開始。2008年から福岡拠点のフリーライターに。

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