死線さまよった大分商プロ注目右腕川瀬の喜び「甲子園はすごいところ」

西日本スポーツ 前田 泰子

 ◆高校野球甲子園交流試合 花咲徳栄3-1大分商(10日、甲子園)

 32校が参加して開幕し、開幕試合に登場した大分商は花咲徳栄(埼玉)に惜敗した。選手宣誓の大役を務め、念願の甲子園のマウンドに立ったエースで主将の川瀬堅斗(3年)は初回に失策に自らの四死球が絡んで3点を失ったが、その後は立ち直って149球で完投。目標だった150キロには届かなかったものの、直球の最速は143キロをマークした。新型コロナウイルスの感染拡大で春の第92回選抜大会と夏の第102回全国選手権大会が中止となった2020年。異例の1年で、高校球児の夢舞台がいよいよ始まった。

 アルプススタンドの大歓声もブラスバンドの応援もない。それでも甲子園のマウンドに立つ喜びは十分に味わえた。「甲子園はすごいところだと感じました」。大分商のエース川瀬は、1試合だけの聖地での149球完投を振り返った。

 1回は内野の失策で先頭打者を出すと、3連続四死球で先制を許し、適時打も浴びて3失点。「思うようにストライクが入らなかった。もっと気持ちに余裕を持てば良かった」。どんなピンチでも笑顔を忘れないエースが顔をゆがめた。

 それでも2回以降は何とか立ち直った。花咲徳栄の強力打線を相手に走者を毎回背負ったが、粘り強くゼロを並べた。6回2死二塁では142キロの直球で見逃し三振を奪い「この日で一番いい球だった」とガッツポーズをつくった。

 準優勝した昨秋の九州大会後に「甲子園で150キロを出す」という目標を掲げたが、コロナ禍で今春以降は思ったように練習ができなかった。休校期間中に体重が増えたこともあったが、県の独自大会と甲子園交流試合が決まってからは、再び大台を目指してきた。

 7月上旬に左太ももを痛めたこともあり、憧れの甲子園に万全の状態で乗り込むことはできなかった。この日の最速は143キロ。「150キロを出せなかったのは力不足。大舞台でも縮こまらず、力を出せるようになりたい」と潔く認めた。

 福岡ソフトバンクでプレーする5学年上の兄晃も大分商OB。目標とする兄の高校時代の試合を見て、大分商への進学を決意した。中3秋に交通事故に遭い、頭蓋骨骨折で生死をさまようほどの重傷を負ったが、懸命なリハビリに励んで高校でも大きく成長した。

 常に励ましてくれた兄に「マウンドでプレーしたところを見せられた。勝ったところを見せられればよかったけど」とマウンドから思いを伝えた。進路について「これから決めたい」と話すにとどめたプロ注目の本格派右腕が、甲子園の記憶を糧に前進する。(前田泰子)

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