「もし高校時代に今の状況だったら?」 高3の質問に、五輪目指すアスリートの答えは

西日本スポーツ 向吉 三郎

 北関東を中心に九州でも分散開催される予定だった今夏の全国高校総体(インターハイ)は本来なら18日に前橋市で開会式が行われるはずだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止になり、多くの高校3年生は最後に日本一を目指す舞台をなくした。目標を失った高校生たちを励まそうと、東京五輪を目指すトップアスリートが母校の後輩たちの質問に答える形でアドバイスを送った。(向吉三郎)

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 「もし高校時代に今の状況になっていたら、どのような気持ちで練習に取り組まれますか」。バドミントンの全国屈指の強豪校、八代東高(熊本)の北崎駿は男子ダブルスの園田啓悟と嘉村健士(ともにトナミ運輸)にこう問いかけた。

 同校でもペアを組んでいた園田と嘉村は2018年の世界選手権で銀メダルを獲得。嘉村は「練習に身が入るかは難しい。しかし、この苦しい時期にどれだけ頑張れるかによって、将来、壁にぶつかった時にはね返すパワーになると思う。何でもいいので目標を立て、それに向かって前向きに頑張る。ただそれだけ」。園田は「3年生でインターハイがなくなったら間違いなくモチベーションが下がってあまり練習をしなくなる。人間だから仕方がない。逆にこの時間が大事。友達と遊んで少し忘れる。そして少しずつ後輩の相手をしていくと思います」と励ました。

 質問は本紙がとりまとめ、選手たちに送った。ボクシング男子ライト級で2大会連続の五輪代表を決めている成松大介(自衛隊)の母校、熊本農高の岩崎拓海も「もし、先輩が高校生だったら」と問いかけた。

 成松の答えは「当時の私は競技も精神面も未熟でしたので『試合がなくてラッキー』と思っていたに違いない。ですが、(皆さんは)今は試練と思って、将来の自分が『あの時、腐らずに頑張って良かった』と言える日が来るように前向きに考えて、日々を過ごしてほしいと思います」。

 コロナ禍で先の見えない東京五輪に挑む先輩と自分たちの境遇を重ね合わせ、アドバイスを求める高校生も多かった。園田・嘉村組は出場権をつかみかける直前に延期が決まった。バスケットボール部の松永愛李は「延期を前向きに捉えるため、どのような考えをお持ちですか」と質問。園田は「決まった時は正直きつかった。前向きに捉えるというよりは一日一日全力で自分と向き合って過ごしています。これが前向きにつながってくれれば一番いいですね」と自分に言い聞かせるような答えを送った。

 柔道男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)の母校、長崎日大高男子ハンドボール部の五郎丸啓太は「このご時世で、練習への意欲が薄れる場合もあるのですが」と悩みを打ち明けた。前回のリオデジャネイロ五輪に続く五輪出場を決めている永瀬は「このような状況でモチベーションを保つのは難しい。最初は『単純に競技を楽しもう』と思いながら活動していけば、もっとうまくなりたいと欲が出てきて、練習意欲も上がってくると思います」と丁寧に答えた。

 昨年度、男子バスケットボールで全国2冠を達成した福岡第一高のハーパージャン・ローレンス・ジュニアは「何を目標に競技に励んでいますか? モチベーションの維持(にはどうすればいいか)を教えてください」

 質問に答えたのはセーリングの男女混合種目、ナクラ17級で初の五輪切符をつかんだ直後に五輪延期が決まった飯束潮吹(エス・ピー・ネットワーク)。「自粛期間前に五輪の延期が決まり、落胆しました。2020年8月に照準を合わせ、体も心も鍛えていた中で1年延期は非常につらかったです。しかし、1年でさらに自分たちのレベルを上げられるチャンスが来たと思えば、気持ち的にポジティブになりました。新しい目標や目的を立てることは非常に大事なので、自分やチームを見つめ直し、頑張ってください」とエールを送った。

 トップアスリートを生んだ高校で部活動に励むだけに大学などで競技を続ける選手も多い。長崎日大高野球部の柴田哲郎は「進学まで、特に準備していたことは」と聞いた。永瀬は「部活を引退してから大学に入るまでの間に他の選手と差がつくと考えていたので、毎日の練習やトレーニングは継続をしていた」と明かした。

 追加種目として五輪に初採用された空手の組手男子75キロ級で代表に決まっている西村拳(チャンプ)は、宮崎第一高空手部の政岡大雅に「結果を出すためにどんなことを意識していますか」と尋ねられ、「練習と試合の感覚を近づける。練習と試合を分けない。頭の中でイメージトレーニングをしながら練習に臨むことも大事にしている」と答えた。

 「ハードなトレーニングをどのように乗り越えていますか」というサッカー部の金子尊の問いには「声を出す。元気よくやる。気持ちが負けないようにわめきながらでもやり抜く。これで妥協したら強くならないと自分に言い聞かせる」と強い気持ちを示した。

 博多高(福岡)から進学した中大在学中に海を渡り、ハンドボール強豪国のフランスのリーグでプレーした部井久アダム勇樹に、空手道部の宮崎穂乃香は「スランプになったときは、どのようなことを考えて練習や試合をしていますか」と質問した。

 部井久は「僕はスランプの経験がないので少し違うかもしれませんが、うまくいかないことが続いているときは自分が変化をしようとしている時。逃げずに向き合うことで、壁を越えたとき本当に強くなった自分になれる」と激励した。

 「気持ちの持ち方」を聞く質問は多かった。部井久は野球部の有川力に「失敗で落ち込むことは簡単です。僕の好きな言葉に明石家さんまさんの『落ち込むほど実力はない』という言葉があります。この意味を考えれば失敗しても下を向かず次に進めると思います」とアドバイス。飯束は剣道部の福井大介に「私が大会前にすることは漫画を読むこと。好きな漫画ではなく、逆転劇や格上相手に勝つシーンだけを見ます。これは心理学でも活用されており、勝つイメージを明確にし自分の中でイメージしやすくするためです。常にフィールドに入る時は自分が主人公であることを忘れないようにしてください」と、それぞれ個性的な助言を送った。

 成松はボクシング部の長野剛典に「リングに上がれば相手も緊張しているし、調子が悪いなと思っていても相手はもっと調子が悪いかもしれません。相手は熊でもライオンでもなく同じ人間。自分で相手を勝手に大きく見ているだけ」と闘う気持ちの大切さを示した。

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質問に答えたアスリート(順不同)

柔道・永瀬貴規(長崎日大高出身)

ボクシング・成松大介(熊本農高出身)

バドミントン・園田啓悟、嘉村健士(熊本・八代東高出身)

セーリング・飯束潮吹(福岡第一高出身)

空手・西村拳(宮崎第一高出身)

ハンドボール・部井久アダム勇樹(福岡・博多高出身)

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 高校生の質問とアスリートの回答の全文は、西日本スポーツ公式サイト内の特設ページ「2020年の高校生へ」で見ることができます。

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