歓喜の30分後グラウンドへ…心打たれたソフトバンク栗原の姿

西日本スポーツ 石田 泰隆

タカ番記者コラム「好球筆打」

 ◆ソフトバンク4-3オリックス(26日、ペイペイドーム)

 まずは何といっても中村晃だ。9回1死一塁からのサヨナラ打(記録は三塁打)。2ボールからのバッティングカウントではあったが、右中間を破る一打を放つ勝負強さは本当に頼りになる。「(4打席目まで)全然打ててなかったので何とかやり返したいという気持ちで打ちました」。自身初のサヨナラ安打とは意外だったが、お立ち台では熱い胸の内を明かしていた。

 これでチームは今季3度目の4連勝となった。貯金も今季初の2桁となる「10」に乗せるなどシーズン折り返しを前に勢いを加速させている。これには工藤監督も「ナイスゲームでした。リリーフ陣は頑張ってサヨナラ勝ちを呼んでくれたし、(打線も)よく打ってくれた」と満面の笑みで選手の奮闘をたたえていた。

 そんな劇勝から30分が過ぎたころだった。上は黒のTシャツに着替え、下はおそらく試合用ズボンのままの栗原が、漆黒のバット一本を手に持ってグラウンドに出てきた。

 この日は25日の試合に続いてノーヒットに終わっていた。打率も再び2割5分を切ったことから、居残り特打でも行うのだろうと眺めていたのだが、それにしては打ち込み用のボールが用意される気配がない。

 栗原も整備が行われる本塁横を通り過ぎ、三塁ベース横も通過していった。そこでようやく察しがついた。それから間もなくして、左翼ポール下まで歩を進めた栗原が力強くバットを振り抜いた。さらに一歩歩いて1スイング。さすがにバックネット後方にある記者席までスイング音は届かなかったが、約30分かけて右翼ポール下まで歩きながらの素振りを繰り返した。

 頭の中は「無」の状態だったのか。あるいは「投手を想定」していたのか。そこは定かでないが、一心不乱にバットを振り込む姿には心を打たれた。開幕直後のように安打を量産する姿は影を潜めるものの、打点はチーム2位の41と勝負強さは健在で、誰もが、近い将来の主軸候補として期待を寄せる。

 グラシアルが打線に加わってから「その後ろ」を任されるようになったのも、首脳陣の期待の表れだろう。その並びでは、結果として15打数3安打と思い通りの打撃はできてないが、この“山”を超えた時は、さらに殻を破った栗原の姿が見られるに違いない。もがき苦しみながらも惜しまない努力は、必ずいつか報われると信じたい。 (石田泰隆)

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