「楽しかった?」トップアスリートに声を掛けられた高校生 東京五輪会場で貴重な体験

西日本スポーツ 前田 泰子 伊藤 瀬里加

 8月23日に行われた陸上のセイコー・ゴールデングランプリ(東京・国立競技場)には、今夏の全国高校総体(インターハイ)が中止となった高校生も「ドリームレーン」として設けられた枠で出場した。女子100メートル障害では伊藤彩花(福岡・青農高3年)が参戦。新型コロナウイルス感染拡大の影響で集大成の場は失われたが、来夏の東京五輪会場で一流アスリートと競った貴重な経験を次のステージでの飛躍に生かす。

来月全国大会で高校記録狙う

 「楽しかった?」。レース直後に、女子100メートル障害の日本記録保持者の寺田明日香(パソナグループ)から声をかけられた。伊藤は「すごく楽しかったです」と声を弾ませて答えた。「寺田さんはスタート前と終わった後で顔が全然違ったんです。間近で見てて迫力がありました」。一流アスリートの息づかいを肌で感じた。

 スタート直前は経験したことのない緊張感に襲われた。「これまでは緊張するといいタイムが出ていたけど、今回は緊張していいパフォーマンスができなかった」。9人中8位で記録は13秒90と今季最高だったものの、13秒65の自己記録更新はならず。「13秒60を目指していたので悔しくて。トップ選手と走れたのはうれしかったけど悔しさも大きいです」と複雑だった思いを打ち明けた。

 「メークとK-POPが大好きでK-POPのダンスを覚えて踊っています」と明るく笑う普通の女子高校生だが、ハードルを跳べば全国トップクラスの実力の持ち主。昨秋は新人大会で自己ベストの13秒65を出し、目標に据えた最終学年での全国総体優勝に弾みをつけたが、コロナ禍で全国総体が中止となった。

 「何のために練習しているのか」。春からの休校期間中も前向きに自主練習をこなしていたが大きな目標を失い、しばらく練習に身が入らなくなった。その後、部活仲間と顔を合わせる機会があり「みんなの顔を見て頑張ろうと思った」と再び意欲を取り戻した。

 6月の学校再開と同時に部活動も再開。指導する仲野牧子監督は「焦りがあったんでしょうね。アスファルトを走りすぎて再開時は足を痛めていました」と当時の伊藤の揺れる心情を明かした。

 セイコー・グランプリの経験を糧にして10月には日本選手権と全国高校陸上大会に出場する。「高校大会で優勝して高校記録を塗り替えたい」。部に残って練習する3年生は伊藤だけ。志半ばで引退した仲間の分も最高の走りを見せるつもりだ。 (前田泰子)

 ◆ドリームレーン 新型コロナウイルス感染拡大で全国高校総体をはじめとした各種大会が中止となった高校生を対象に、今大会で設けられた出場枠。全国から参加者を募集し、競技実績や寄せられた意気込みコメントをもとに選考。28人が選出され、最終的には25人が出場した。

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