ただの逆転勝ちではない ソフトバンクこの1勝が持つ価値

西日本スポーツ 石田 泰隆

タカ番記者コラム「好球筆打」

 ◆ソフトバンク5-4オリックス(3日、京セラドーム大阪)

 失策、失策からの逆転本塁打だ。さすがにこれでは先発二保は責められまい。しかも、3回までは無安打無失点と最高の投球を見せていた。むしろ同情する声の方が大きいはずだ。

 ただ、そんなオリックスの4回の反撃を見ていて思い出したことがある。記者として駆け出しだったころのことだ。経験不足で稚拙な原稿を書く当方に向け、上司は決まってこう言った。

 「サンドバッグにも意地があろう」

 当時はまだ、怒鳴られることなんてのはざらな時代だ。原稿の差し替えも何度も食らった。そして最後に「サンドバッグにも…」と諭される。文字通り、言われっぱなしで終わらず、いいかげん、意地を見せたらどうだ?といった究極のエールだったように思う。真意は分からないが…。

 そんな「サンドバッグの意地」を、危うく工藤ホークスが食らうところだった。今カードの前まで13勝2敗と今季も「お得意さま」状態にあったオリックスに、だ。初戦は零封負け。しかも、大黒柱の千賀が相手の大黒柱・山本に投げ負けるといった内容だった。

 続く2戦目は守護神の森が2点のリードを守り切れなかった。あとアウト一つで勝利というところまでこぎ着けながら同点とされ、延長10回引き分けに終わった。「最低でも負け越さないことが大事」。カード勝ち越しを何より重要視する工藤監督も、3日の試合前は気合に満ちていた。

 だからこそ、2本の本塁打で逆転に成功し、そのまま勝ちきった1勝を指揮官は心から喜んだ。「ナイスゲームでした。本当に選手が頑張ってくれました」。お得意さま相手に負け越さなかったからだけではない。この勝利が持つ意味を誰よりも感じていたからだろう。

 チームはきょう4日、本拠地福岡に戻って2位につける苦手ロッテとの対戦が待つ。仮にこの日敗れていれば、ロッテに2・5ゲーム差と再接近された状況で大事な3連戦に臨まなければならなかったが、逆転勝ちを収めたことで3・5ゲーム差と3連戦でひっくり返されることのない“セーフティーリード”を保ったまま難敵を迎え撃つことができる。

 「きょう勝って、気持ち良く明日帰って。そしてまた、いい試合をする。そのためにも、きょうはぜひとも勝ちたかった」

 ただの逆転勝ちではない。覇権奪回を目指す上で価値ある、貴重な逆転勝ちではなかったか。指揮官の言葉からも、その思いがひしひしと伝わってきた。 (石田泰隆)

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