非情の采配「松田宣外し」「三塁グラシアル」に込められた本当の意味

西日本スポーツ 倉成 孝史

〈鷹番が見た〉

 ◆楽天1-8ソフトバンク(9日、楽天生命パーク宮城)

 今季70試合目。マラソンで言えば、折り返し地点を過ぎて数キロ走ったところか。まだ「ラストスパート」をかけるタイミングでは当然ない。ただこの日、工藤監督がVへ向けての「ギア」を一段階上げた。

 試合前練習中。本多内野守備走塁コーチのノックを三塁で軽快に受けるグラシアルの姿があった。この時点で予感したのは「松田宣がスタメンから外れるのでは…」。実際先発にベテランの名前はなかった。

 不振の松田宣のベンチスタートは今季2度目。ただグラシアルの三塁起用は、過去に工藤監督が短期決戦でしか使ったことがない「勝負手」だ。昨年のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(S)第1戦で楽天に敗れ、あと1敗で「終戦」まで追い込まれると、第2戦から2試合連続で松田宣を先発から外してグラシアルを三塁で起用した。

 「苦しい決断だったが、後悔だけはしないように」と、故障者が続出したレギュラーシーズンで唯一全試合出場したベテランを先発から外す苦渋の決断を下すと、チームは連勝でファーストSを突破。そのまま一つの黒星も喫することなく、日本一まで駆け上った。

 ただ、西武とのCSファイナルSでは初戦から松田宣はスタメンに戻っている。ファーストSでの決断は窮地だからこその「劇薬」とも言えた。昨季までの5年連続を含め、過去7度全試合出場しているチームの顔の一人。8月に入っても打率が一時1割台に落ち込むなど不振を極める今季も、指揮官は「マッチが打てば盛り上がる」と時には1番で起用するなど「三塁・松田宣」は、いわば「聖域」とも言えた。

 松田宣について問われた指揮官は「すいません…」とだけ語った。ただ情を排した「三塁・グラシアル」は、2020年型最強打線完成に「リーチ」がかかったことを意味する。今季はシーズン60発の実績を誇るバレンティンが加入。キューバコンビも加えた3人の「そろい踏み」を多くのファンが待ち望んでいるだろうが、バレンティンは2軍調整中で実現していない。

 「三塁・グラシアル」はバレンティンが輝きを取り戻して再昇格した際に“助っ人”3人同時起用を可能とするオプションだ。工藤監督は「すいません…」に続けて話した。「もう残り50試合。調子がいい人を打席に立たせて、いい形で勝っていかないといかないというところもある」。2位ロッテが依然0・5ゲーム差で食い下がるが、引き離すための大きなパワーを出力する「ギア」は、工藤ホークスにはまだある。 (倉成孝史)

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