元バレー代表・迫田さおり ぎりぎりの心と、生き残るための武器

西日本スポーツ 西口 憲一

【連載】つなぐバレー つながる想い

 コロナ禍で来夏に1年延期となった東京五輪。バレーボール女子日本代表は2012年ロンドン五輪以来のメダル獲得とお家芸復活を目指している。

 そのロンドンでの銅メダルメンバーだった迫田さおりさん(32)=鹿児島市出身=は無名校の出身ながら、チームメートと「想(おも)い」をつなぎながら「日の丸」を背負う一流選手へと駆け上がった。惜しまれつつユニホームを脱いで3年。それでもファンを魅了した代名詞バックアタックの記憶は色あせない。バレーの魅力を「ボールと一緒に心をつなぐスポーツ」と言い切るアタッカーの歩みを振り返った。(聞き手・西口憲一)

   ◇   ◇   ◇

 ≪五輪で「日本のお家芸」といえばバレーボールだった。女子は「東洋の魔女」と呼ばれた1964年東京、新幹線にちなんだ高速バレー「ひかり攻撃」が威力を発揮した76年モントリオールでいずれも金メダル。現在の女子日本代表を率いる中田久美監督がセッターだった84年ロサンゼルスでも銅メダルを獲得した。その後表彰台から遠のき、次の五輪メダルは真鍋政義監督の下で、迫田さんらが活躍した2012年ロンドンでの「銅」まで待たなければならなかった。お家芸復活を目指す中、迫田さんは10年春、初めて代表の登録メンバーに選ばれた≫

 「日の丸をつけても恥じない」自分になれるように心掛けていました。周囲に対しては、自分に言い聞かせるように「メンバーに残れるように頑張ります!」と口にしていました。誰もが行ける場所ではありませんし、一言では表せない世界です。覚悟がないと、立っていられない。いつ膝に手をついてもおかしくない。そうならないように自信をつけて、強い自分でいるか、なんです。ぎりぎりの精神状態でした。

 代表に対しての私のイメージは昔も今も変わりません。膝に手を当てた瞬間、次の人がスーッと後ろから抜いていく。ライバルはすぐ背後にいるんです。逆に自分もチャンスをものにできる準備をしておかないといけない。(東京都の味の素ナショナルトレーニングセンターなどで行われる)代表合宿は東レの体育館とはまた違います。「国を背負う覚悟」や「メダルを取るために…」―。あの体育館には常に緊張感に満ちた雰囲気が漂っていました。

 ≪10年度の代表アタッカー陣には04年アテネ、08年北京の両五輪に出場した栗原恵さん(当時パイオニア)や、東レの先輩でもある木村沙織さんの名があった≫

 心身ともにきついからといって、逃げたいとかはありませんでした。いかに生き残るか、欠かせない存在になれるか、なんです。必死でした。日本中でバレーボールを頑張っている多くの人たちが目指している場所。皆で代表チームをつくり上げていく過程で、どうしたら貢献できるかを考える。

 代表内で選手同士は仲間でありながらライバル。日本のトップ選手が集まる場所なので学べることが多い。一方でライバル視しすぎるのも良くありません。お互いにとっていい刺激となり、チーム力向上にもつながる。自分が生き残ることも大事。それ以上にチームの中で何を求められているのかを感じ取ることが必要です。

 ≪迫田さんの代名詞でもあるバックアタックは、東レでレギュラーをつかむ前、自主練習で先輩セッターの中道瞳さんに「ちょっと打ってみようよ」と誘われたのが始まりだという≫

 バックアタックは誰でも打てます(笑)。それが決まるか、決まらないか、なんです。高校時代は打った印象があまりなくて、東レで取り組み始めたころは「ああ、打てるね」みたいな感じで周囲から見られていました。コートで使える日は来るのかな、と思っていました。そこから少しずつ「リオ(愛称)のバックアタック、すごいよね」と褒めていただけるようになりました。

 私はいろいろなプレーを器用にできるタイプではないので、これだけは誰にも負けない、という武器を持っておくことが肝要だと教わりました。代表合宿に呼んでいただくようになってからは「武器になるかも」ではなく「バックアタックを私の武器にする!」と強く意識していました。

 私、サーブレシーブが苦手なんです。それでもコートに入れてもらうためには誰よりも点を取らないといけない。そのためにもバックアタックを磨かないと必要とされないんだ、と信じていました。大事にしていたのはセッターとの呼吸でした。なおかつ、私はポジショニングでいろいろ動いていたのでレシーバーとのコンビネーションもテーマでした。

 現役時代を振り返ると「バックアタックという武器があって良かった」が、率直な気持ちです。お守りみたいなものでした。私が子どもたちに伝えたいのは、テクニックじゃなくてもいい。この人のプレーって何か人を引き付けるね…とか、他人にはない魅力を持ってほしいということです。一生懸命挑戦して、はね返される姿だってすてきです。まぶしいじゃないですか。(随時公開)

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