日本ラグビー「祭りの後」の変化 地方発の新たな動きと課題

西日本スポーツ 大窪 正一

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会の開幕から20日で1年。日本中が熱狂したブームは新型コロナウイルスによって水を差された。それでも8強入りを果たした日本代表選手はさらなる高みを目指し、開催自治体はレガシー継承を誓う。コロナ禍の4月に九州ラグビー協会の会長に就任した久木元孝行氏(66)に「祭りの後」の変化や今後の取り組みを聞いた。(聞き手・取材=大窪正一)

 -コロナ禍の4月に九州協会の会長に就いた。苦労も多かったのでは。

 「九州各県の全ての協会にまだあいさつに伺えていないのが心苦しい。九州協会主催の17大会が中止になった。7月4日に大分で行われる予定だった日本代表とイングランド代表のテストマッチも中止。W杯の盛り上がりが再現されるはずだったので残念だった」

 -コロナ禍の中、国際統括団体ワールドラグビーの競技再開に向けた指針に基づく日本協会のガイドラインに沿い、九州各県独自で中学生や高校生の大会が動きだした。

 「各県の運営関係者の尽力に本当に感謝している。子どもたちのために通常の2倍の人員でボランティアが対応。頭が下がる。19日には九州協会主催で今季初の公式大会(第2回九州U18女子セブンズ)が福岡の春日公園球技場で行われる」

 -コロナ禍以前はW杯の追い風が吹いていた。

 「ラグビースクールは入部希望者が急増し、受け入れ態勢が整っていないために断らざるを得ない状況さえ生まれていた」

 -福岡ではW杯以降、日経大やナナイロプリズム福岡など女子ラグビーチームも発足した。

 「非常にありがたい動きだ。発展に向けたPR活動をフォローしたい。裾野を広げるためにも今後は経験者がレフェリーや指導者としてラグビーに関わっていける体制を整えたい」

 -発展のために九州協会としての課題は。

 「九州のラグビースクールに所属する小中学生は10年前から約1500人増えたが、逆に中学、高校の部活動は約1500人減少した。子どもたちに長く競技を続けてもらう受け皿づくりが急務だ」

 -文部科学省は公立中高の休日の部活動を地域に移管し、教員の指導は希望者のみとすることなどを盛り込んだ働き方改革案をまとめた。

 「スクールと部活動の連携が必要になってくると思う。指導者の人数をいかに確保していくか。ボランティアで支えられている現状の改革も必要になるだろう」

 -日本代表は年内の活動を見送った。宮崎で長期合宿を行い、W杯の成果を上げるなど九州は代表活動を支える強化の「虎の穴」でもある。

 「ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチと強化担当の藤井雄一郎氏がかつて宗像サニックスに所属していたので九州の特性や条件を熟知している。宮崎では約30年前から代表合宿を支援している強みがある。また他の自治体も昨秋のW杯以前から支援しており、今後は宮崎だけでなく九州の強化拠点化(合宿など)が進むと思う」

 -久木元会長は宮崎・延岡高でラグビーを始めた。明大に進み、俊足バックスとして日本代表候補にも選ばれた。

 「大学卒業後は九州電力でプレーする機会に恵まれ、気づけば51年間もラグビーと関わり続けている。球技ながら格闘性が強く、痛みや恐怖とも隣り合わせのラグビーは人間性が表れる。仲間のためにカバーし合う。W杯を機会にラグビーの魅力を多くの皆さまに知ってもらえてうれしい」

 -明大時代の2学年上が日本協会の森重隆会長だ。

 「懐が深く、偉大で尊敬できる先輩。九州電力の選手時代も(森会長が所属した)新日鉄釜石に合宿に出向いて胸を借りた。長い付き合いだ。日本協会で奔走する森会長の考えを九州だけでなく、全国に浸透させるためにできることをやりたい」

 -高校や大学、トップリーグ(TL)などコロナ禍のラグビーシーズンが始まる。

 「W杯の追い風が失速したのでコロナ禍が収束に向かい、無事に大会が開催されることを願っている。TLは世界から注目されている。W杯で活躍した世界のトップ選手が多く参加する予定。わくわくするようなラグビーが見られる」

 -TLは2022年から新リーグへと移行する予定だ。九州からは宗像サニックス、コカ・コーラ、九州電力が参加を申し込んでいる。

 「非常に期待している。TLの立ち上げに関わった。当時は企業の負担が大きく、理解を得るのが難しい状況だったが、地道に一歩ずつ課題をクリアして今がある。新リーグも本拠地のすみ分けなど難しい問題が横たわるが、乗り越えられるはずだ」

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