五輪個人総合連覇、内村航平が取材直後に見せた忘れられない姿

西日本スポーツ 大窪 正一

【記者コラム】

 種目別の鉄棒に絞って東京五輪を狙う日本体操界初のプロ選手、内村航平(リンガーハット)=長崎県諫早市出身=が22日、全日本シニア選手権(群馬)でスペシャリストとしてのスタートを切る。劇的な展開で個人総合2連覇を果たした2016年のリオデジャネイロ五輪。現地でその瞬間を見届ける幸運に恵まれた記者として新たなウチムラに注目している。

 4年前の夏。個人総合の激闘の後に見せた姿が忘れられない。全ての取材を終えると腰の痛みに耐えかねて顔をゆがめた。そして人目もはばからず寝転がり、虚空を見つめた。フル回転した悲願の団体総合制覇から中1日の戦いだった。キング・オブ・ジムナスト(体操の王者)の誇りと意地が伝わってきた。

 個人総合は全6種目に応じて技術や使う筋肉が違う。内村は筋力も瞬発力も体操選手として平均的ながら、身を削る努力と才能で補ってきた。だが「筋力がすぐ落ちる。維持すら難しい」と苦笑いしたこともある。

 5種目を終え、オレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)に0・901点の大差を許して迎えた最後の鉄棒。記者席で「負け原稿」を考えながら、椅子に座って演技を待つ内村に目を移した。両手を使って一心不乱にイメージトレーニング。力を出し切ることだけに集中していた。対照的にベルニャエフは小刻みに体を揺らし、落ち着かない様子。くぐり抜けてきた修羅場の違いを感じた直後の大逆転劇だった。

 「6種目やってこそ体操」「体操を知らない人はサーカスをすごいと思う。それ以上のことをやっている体操の魅力を広めたい」-。勝ち負けを超越し、体操のすごみを伝えたい使命感がオールラウンダーのこだわりを支えていたように思う。

 個人総合への未練と満身創痍(そうい)の体や加齢による衰えなどと折り合いをつけた鉄棒への専念。リオ五輪では、海外メディアから陸上のボルトや競泳のフェルプスと並ぶ世界的スターの一人として称賛された。体操界の発展を願ってきた第一人者として自国開催の晴れ舞台に自らが立つ意義も意識した決断。研ぎ澄まされた演技がまもなく披露される。 (大窪正一)

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