元バレー代表・迫田さおり 五輪でユニホーム2枚重ねて着ていた理由

西日本スポーツ 西口 憲一

【連載】つなぐバレー つながる想い

 コロナ禍で来夏に1年延期となった東京五輪。バレーボール女子日本代表は2012年ロンドン五輪以来のメダル獲得とお家芸復活を目指している。

 そのロンドンでの銅メダルメンバーだった迫田さおりさん(32)=鹿児島市出身=は無名校の出身ながら、チームメートと「想(おも)い」をつなぎながら「日の丸」を背負う一流選手へと駆け上がった。惜しまれつつユニホームを脱いで3年。それでもファンを魅了した代名詞バックアタックの記憶は色あせない。バレーの魅力を「ボールと一緒に心をつなぐスポーツ」と言い切るアタッカーの歩みを振り返った。(聞き手・西口憲一)

   ◇   ◇   ◇

 ≪2012年ロンドン五輪のバレーボール女子日本代表にはセッター竹下佳江さん、世界屈指のリベロと評された佐野優子さん、エースの木村沙織さん、現在も代表主将のミドルブロッカー荒木絵里香(現トヨタ車体)、今年6月に現役を引退した新鍋理沙さんらがいた。多士済々の顔触れの中、日本中に「サコダ」の名が広まったのは韓国との3位決定戦だった≫

 全員がリベロのようにレシーブすることが重要でした。少しでも、1センチでもボールを上げたら必ず仲間がつないでくれると信じて無我夢中でプレーしていました。竹下さんはチームのバランスを考えながらトスを上げてくれるセッターでした。アタッカー一人一人を輝かせてくれました。私もその一人でした。「みんながつなぎ、竹下さんが上げたトスを何としてでも決める」との一念で右手を振り下ろし続けました。

 ≪背番号「14」だった迫田さんは、準々決勝から「14」の下に「13」のユニホームを着てプレーした。同い年で代表でもポジション争いをした石田瑞穂さんのものだ。石田さんはリザーブメンバーで同行しながら、家庭の事情で急きょ帰国した≫

 サーブレシーブが不得手な私に対し、守備も上手な選手でした。自分のことは二の次で、人のことを真っ先に真剣に考える彼女は誰からも慕われていました。絶対に手を抜かずにコツコツと努力する姿にいつも刺激をもらっていました。声を出して仲間を盛り上げることもできる。とてもかないませんでした。

 リザーブだった彼女は結局、大会で一試合も見ることなくロンドンから日本へ戻りました。リザーブは選手村に入れなかったので一緒にはいられないんです。だから、試合になったら必ず会えると思っていたのに、会場でいくら捜しても姿が見当たらないんです。

 何でいないの?と思っていたら、日本に戻った理由を聞かされ、心中を推し量りました。代表のユニホームを着られないと分かっていながらロンドンまで来て、私たちをサポートして、最後こんな形で…。言葉が見つかりませんでした。

 ≪石田さんの背番号「13」のユニホームを着ることを迫田さんに勧めたのは代表を率いた真鍋政義監督だった≫

 真鍋さんから石田さんのユニホームを着て試合に出る提案をいただきました。私に拒む理由はありません。「喜んで着させていただきます」と答えて石田さんのユニホームを手に取りました。

 バレーのユニホームはぴちっとしているので、多くの方が窮屈でプレーしにくい印象を持たれているかもしれません。この試合では重ね着をしても着ていることすら忘れるほど動けました。一体感の力強さ、心強さをひしひしと感じたのを覚えています。

 どちらが(代表から)落ちてもおかしくなかった。彼女はライバル以前に仲間以上の存在でした。それを分かってくださっていた真鍋さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

 ≪韓国との3位決定戦ではチーム最多の23点を挙げ、3ー0のストレート勝ちに導いた。マッチポイントを握り、最後は渾身(こんしん)のスパイクがブロックアウトを誘った≫

 最後の試合、実は全く決まらなくなった時間帯があったんです。「次、決められなかったら代えられるだろうな」と覚悟しました。(同じアタッカーの)江畑(幸子)選手が交代要員としてベンチで呼ばれているのも視界に入っていました。

 私は一秒でも長く、石田さんとコートに立ち続けたいと思いました。今までの頑張りを思い出し、石田さんの分まで決める!と。そのおかげで1点を決めることができました。高い打点から相手コートの奥にアタックが決まりました。それが決まったからこそ、最後までコートに立っていられたと言い切れます。

 ≪迫田さんは11年にわたる現役生活で「スタッフやチームメートが一人でも欠けていたら私は駄目だった」と振り返る≫

 背中を押してもらい、引っ張ってもらいました。立ち止まったとしても、誰かが必ず手を差し伸べてくれました。東レでも代表でもそうでした。仲間の支えがあったからこそ、これからもバレーボールは私の人生にとって切っても切れない宝物のような存在になるでしょう。バレーでつなぐのはボールだけではありません。想(おも)いもつなぐのです。(随時公開)

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