コロナ禍で目標消えた大学生選手「悔しいけど」我慢重ね、見つけた光

西日本スポーツ 末継 智章

〈大学生アスリートのいま〉

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたスポーツ界で、大学生の秋冬シーズンが始まった。コロナに翻弄(ほんろう)されながらも、乗り越えた注目の競技、大学、選手を通して、大学生の「いま」を追う。

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 コロナ禍から立ち上がり始めた大学スポーツ界に冷や水を浴びせるような事態が起きた。17日、東海大硬式野球部の部員が寮内で大麻の疑いがある薬物を使用していたことが判明。開催中だった首都大学野球秋季リーグの出場を辞退した。

 多くの大学スポーツは春や夏の全国大会が中止となっていた。「練習に打ち込む機会を奪われ、若気の至りで気を紛らわせるために別のことに興味が傾いた可能性はある」。九州国際大サッカー部で監督を務める籾井徹司氏が指摘する。近大のサッカー部でも男子部員の大麻使用が発覚。部員は「コロナで暇になり、興味本位でやった」と話していたという。

 九州国際大のサッカー部は活動休止の期間にもコミュニケーションを欠かさなかった。「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けた活動を始め、週1回オンラインで報告し合っていた。籾井監督は「全員が一つの目標に向かって取り組む機会が結束力の維持につながった」と受け止める。

 先の見えない状況でも、ほとんどの強豪の部活は目標を見失わず、一丸でコロナ対策に取り組んでいた。明大ラグビー部は寮内感染を防ぐため外での飲酒を禁止し、部外の人間と会うのを自粛していた。箸本龍雅主将(4年・東福岡高)は「大学が求めるより厳しい制限を課して安全に努めた」と自負する。不満を漏らす部員とも話し合い「一体感が逆に高まった」。4日に開幕した関東大学対抗戦では開幕3連勝と2大会ぶりの大学日本一へ好発進した。

 硬式野球部が問題を起こした東海大の柔道部は4月に活動を休止すると、学内の他競技や他校の柔道部が7月ごろに再開しても9月中旬まで自粛を続けた。上水研一朗監督は「密着する競技の特性上、再開するのは最後と思った」と説明する。自粛中に全日本学生優勝大会と全日本学生体重別団体優勝大会が中止になり、両大会の連覇という目標が消えた。

 後藤龍真主将(4年・鎮西高)は唇をかみしめる。「悔しいけど、柔道家である以前に一人の人間。安全面を考えたら、やるべきではないと我慢した」。熊本に帰郷してからも4年生を中心に会員制交流サイト(SNS)で連絡を取り、「今こそ自分の柔道を見つめ直すとき」と呼び掛けた。

 9月中旬に練習を再開した直後も部員約130人が密にならないよう、一度に稽古する人数を30人に制限。他校でクラスター(感染者集団)が発生した中、東海大柔道部は感染者を出していないという。「みんなが大学や柔道部のことを考え、我慢してくれた」。後藤主将は感謝を形で表すため、男子100キロ級に出場する講道館杯全日本体重別選手権(31日開幕)での活躍を誓う。

 薬物使用問題は大学スポーツに暗い影を落とした。だが、コロナ禍を乗り越え、我慢を重ねて光を見いだしたアスリートも確かにいる。 (末継智章)

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