工藤監督独自の野球観 最も重視するイニングと、モイネロ起用の背景

西日本スポーツ 石田 泰隆

タカ番記者コラム「好球筆打」

 ◆ソフトバンク5-1ロッテ(27日、ペイペイドーム)

 勝ちに飢えた男たちが、ついに頂点に返り咲いた。過去2年はリーグ2位からの日本一。喜びは感じつつも、重い“十字架”を背負い続けた2年でもあった。

 工藤監督の言葉にも実感がこもる。「ほっとしている」。監督就任6年目で3度目のリーグ制覇。現役時代を含めると17度目だ。勝つことの意味を誰よりも知る。だからこそ、苦しんだ分だけの感情が胸に去来したのではないだろうか。

 それにしても、シーズン最終盤に見せた破竹の12連勝には、あまりの強さに恐ろしさすら感じた。指揮官の打つ手すべてに選手が応える。中でも周東だ。工藤政権下では確立できなかった「1番打者」問題を、いつの間にか解消。後半戦MVPに挙げられてもおかしくない働きだった。

 一方、シーズンMVPとなると、個人的にはモイネロを推す。打撃主要全3部門で上位につける柳田も有力だが、投手中心に「守り勝つ野球」をカラーとする戦いを振り返れば、モイネロの存在は絶大だった。

 投手分業制が確立された現代野球では、いかに「8回」を抑えるかが勝負のカギを握るとみる。リードした状態で8回さえ乗り切れば、9回に全力を注げるからだ。だからこそ、8回には救援陣トップの力量を誇るモイネロを配置しているものだと思い込んでいた。

 しかし、工藤監督の考えは違った。モイネロの8回起用はあくまでもチーム事情によるもの。何より重視するのは7回に「相手の反撃意欲を限りなくそぐ」という独自の野球観だった。

 「一番の肝は7回。試合の流れ的に、最後に主軸に回るのは7回が多い。そこさえしのげば、あとは何とかなる。だから、7回をどう乗り切るか。そこを踏まえて救援陣を配置する」

 その筆頭候補が岩崎だった。開幕前は力で打者をねじ伏せられる右腕を7回に配置し、8回モイネロ、9回森の必勝パターンを思い描いた。しかし、岩崎が開幕2カード目の西武戦で連日打ち込まれ、奪還の青写真が早々に崩壊。必勝継投の再整備を強いられた。

 そこで工藤監督はモイネロの「7回前倒し」を検討したが「リズムを崩すのも良くないと思った」と無双状態にあった左腕の持ち場変更によるリスクを考慮。自身が最重要視する7回は現有戦力でしのぎ、モイネロを「8回固定」とした。

 この我慢が、結果的に最高の恩恵をもたらした。チームは7回終了時にリードしていれば59勝4敗1分け。もちろん、守護神森の働きがあってこそだが、8回に圧倒的な投球で相手の反撃意欲をそぎ、森に勝利のバトンを渡し続けた助っ人左腕の存在があったからこそ、指揮官は逆算して勝利への道筋を立てられた。

 成績を見てもMVP級の活躍だったことが一目で分かる。ここまで49登板でリーグ断トツの37ホールド、防御率1・72。47イニングで75奪三振と圧巻の数字が並ぶ。これらを呼び込んだのが、工藤監督の「我慢の決断」だったのかもしれない。 (石田泰隆)

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