あの日を境に人が変わったソフトバンク周東「今の自分じゃダメだと」覚醒の転機

西日本スポーツ 長浜 幸治

 ◆ソフトバンク2-0ロッテ(28日、ペイペイドーム)

 Vの余韻から目覚めさせるような快足で、鷹のスピードスターが昭和の盗塁レジェンドに並んだ。周東佑京内野手(24)が福本豊(阪急)に並ぶ日本記録の11試合連続盗塁を達成。3回2死一塁、左腕チェン・ウェインの一塁けん制に誘い出されながらも塁間でぐんぐん加速し、二塁を陥れた。チームは先発千賀の5年連続2桁勝利となる8回12奪三振の好投でロッテに4連勝。球団タイの月間19勝目だ。手綱を緩めず4年連続日本一へ突っ走る。

■9・12西武戦涙が転機に

 冷や汗をかきながら「世界の盗塁王」に並んだ。3回2死、一走の周東がチェン・ウェインのけん制に誘い出された。「やばい。もう二塁にいってしまえ」。迷うことなく快足を飛ばし、難なく二塁を陥れた。痛恨のミスをも帳消しにしてしまう絶対的な走力を見せつけ、阪急の福本豊が1971、74年にマークした日本記録の11試合連続盗塁を成し遂げた。

 「アンタッチャブルレコード」といわれる通算1065盗塁、シーズン106盗塁を持つ福本とは今年1月に初めて顔を合わせた。「走りたいなら塁に出ろ」との助言を受けたレジェンドに「1065も106も絶対に無理。本当に異次元の存在です」と恐縮しっぱなし。それでも投手のクイックモーション技術が格段に向上した現代野球での記録達成は大きな価値を持つ。

 自信なさげな細身の青年が球史に名を刻むまで成長した。東農大北海道オホーツクで1年のころから周東を見てきた作山チーフスカウト補佐は「足はプロのトップランクに入るほどズバ抜けて速かった」と振り返る。それでも不安はあった。それは課題の打撃でも守備でもなかった。

 「能力の割に自分に対する見積もりが低い。『俺のプレーを見てくれ』という感じが全然なかった。珍しいタイプ。大学でも、もっと走れるはずなのにと、もどかしさもあった」。その分析は今季の姿にも当てはまった。7月が終わるまでわずか2盗塁。本人も「思い切ってスタートを切れなかった」と自信のなさが言葉にも結果にも表れた。

 あの日を境に人が変わった。9月12日の西武戦。2失策を記録した試合中、周東はベンチで人目もはばからず泣いた。「あれがターニングポイント。今の自分じゃダメだと。チームのためにもっと自分がやらなくちゃと思った」。覚悟は数字にも表れる。同日までの58試合で決めた盗塁は17個。一方、翌日から10月28日までの38試合でマークした盗塁は実に30個だ。この38試合のペースを143試合に換算すると約113個と驚異の数字に達する。

 今季47盗塁目をマークし、2位につける日本ハムの西川に9個の差をつけた。悲願の初タイトル獲得が現実味を帯びてきた。チームの4年連続日本一に向け、今や欠かすことのできない存在。「今は(盗塁を)失敗するビジョンがない。成功するイメージしかない」。自信と覚悟を手に入れた24歳のスピードはとどまることを知らない。 (長浜幸治)

   ◇    ◇

 ◆「世界の盗塁王」福本豊(ふくもと・ゆたか)大阪・大鉄高(現阪南大高)から松下電器を経て、1969年、ドラフト7位で阪急に入団。70年に75個で初の盗塁王となり、72年には当時のメジャーリーグ記録を破るシーズン106盗塁(日本最多)をマークした。13年連続で盗塁王を獲得し、83年にはルー・ブロックの当時のメジャー記録を超える通算939盗塁を記録。プロ20年で日本最多1065盗塁の「世界の盗塁王」。左投げ左打ちの外野手。

PR

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング

PR

注目のテーマ