元バレー代表・迫田さおり 涙の復帰果たした長岡望悠の姿に「新しい私」見た

西日本スポーツ 西口 憲一

【連載】つなぐバレー つながる想い

 コロナ禍で来夏に1年延期となった東京五輪。バレーボール女子日本代表は2012年ロンドン五輪以来のメダル獲得とお家芸復活を目指している。

 そのロンドンでの銅メダルメンバーだった迫田さおりさん(32)=鹿児島市出身=は無名校の出身ながら、チームメートと「想(おも)い」をつなぎながら「日の丸」を背負う一流選手へと駆け上がった。惜しまれつつユニホームを脱いで3年。それでもファンを魅了した代名詞バックアタックの記憶は色あせない。バレーの魅力を「ボールと一緒に心をつなぐスポーツ」と言い切るアタッカーの歩みを振り返った。(聞き手・西口憲一)

   ◇   ◇   ◇

 ≪コロナ禍に見舞われた今年、迫田さんは夢を一つ、かなえた。地元鹿児島のテレビ番組の体験取材でドライフラワー作りに初挑戦。鹿児島市にある専門店の「ANDORA(アンドラ)」で“永遠に咲き続ける花”を自ら手掛けた。幼少期から花屋さんに憧れていたこともあり、至福の時間になった≫

 大好きなお花に携われていることがあまりにもうれしくて、所属事務所のマネジャーさんに「ここで働きたいです!」と、思わず口にしたほどです(笑)。九州各地で豪雨被害が出た後だったこともあり、大変な生活をされている方々の力になりたい、と思案していました。アンドラさんの協力でドライフラワーの花束とキーホルダーを作り、お買い求めいただいた方からのご厚意を被災地へ贈らせていただきました。

 プロの方が丹精を込めた商品と違うのは百も承知です。差し出がましい心情もありましたし、失敗も重ねました。それでもお店に何度も通わせていただき、やっとの思いで完成したときは、うれしい気持ちでいっぱいでした。

 お花は家に飾ってあるだけで気持ちが華やいだり、和んだりできます。キーホルダーの中にお花を入れて「スマイル!」「シャイニング!」などと一言メッセージも書き添えました。花束を見て心が少しでも晴れて笑顔になってもらえればと、真心を込めて作らせていただきました。

 ≪Vリーグが10月17日に開幕した。迫田さんはスポーツ専門チャンネル「GAORA」での解説を通して競技の魅力や自身が経験したからこそ感じられる思いを言葉にして伝えている≫

 全チーム、全選手応援しています。正直な気持ちです。その中でも、ぜひ多くの方々に見ていただきたいのは久光の長岡望悠(みゆ)選手です。たくさんのメッセージが詰まった姿が今の彼女から見られるのでは、と私も楽しみにしていました。

 ≪2016年のリオデジャネイロ五輪で一緒にプレーした長岡は2度にわたり左膝を負傷しながら、手術とリハビリを経て今夏の代表合宿に招集された。前衛、後衛関係なく強打を打ち込む29歳のサウスポーは、来夏の東京五輪に向けて得点力が課題の女子日本代表にとって貴重な存在だ。復帰戦となった同18日のJT戦、コートに入った長岡の目から涙があふれた≫

 想像を絶する日々だったはずです。あの涙には、苦しさやつらさを支えてくれた人のためにという感謝など長岡選手しか分からない感情がたくさん込められていたのでは、と感じました。コートには長岡選手と同期入団の石井優希選手と野本梨佳選手の姿もありました。きっと3人で励まし合ってきたのでしょう。長岡選手はトスにタイミングを合わせて打ち切っていましたし、切れのあるスパイクも変わっていません。むしろ磨きがかかった印象を受けました。

 本人は「新しい私」としてコートに立っていたのではないでしょうか。涙を拭いた後は「勝負師」の顔に変わりました。感慨に浸るのではなく、久光を勝利に導くことを考え、プレーしている姿は心に響くものがありました。そこに彼女の強さを感じました。選手がプレーで表現したいことが「想(おも)い」となって見る側にも伝わってくる。想いがつながり、分かち合うとは、こういうことかもしれません。

 私は選手時代にバレーボールを「好きです」と、なかなか言えませんでした。何のためにやっているのか、ということが明確になって初めて「好きです」と言い切れるようになりました。引退する数年前のことです。

 どこに魅力を感じるのか、やりがいを覚えるのか、自分はどんな選手になりたいのか、どんな選手であり続けたいのか。パズルのピースが埋まっていくように自分の中で少しずつ整理されていき、いつの間にか「バレーが好きなんだ」と気が付いていた…という感じです。厚みのある時間の中で思い切り、バレーに打ち込めたことは幸せでした。

 今は、違う自分を発見できるのが楽しみです。「ああ、こんな私がいたんだ」と、バレー以外をしている新しい自分との出会いが新鮮に感じます。知らない世界が広がっている中で、自分自身がわくわくすること、楽しいことは自然とできますよね。幸せって案外身近にあるんだな、と思います。この「わくわく感」だけはいつまでも止めたくありません。(おわり)

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