中学生レスラーと父の二人三脚の夢

西日本スポーツ 松田 達也

【記者コラム】

 いかついマスクに覆われて表情は読めない。それでも熱い思いは伝わってきた。15歳の中学生プロレスラー、リングネーム「ヴァンヴェール・ジャック」の夢は、メキシコのプロレス・ルチャリブレでデビューすることだ。「将来はルチャドール(メキシコのレスラー)になって、世界で活躍したい」。その言葉を聞いた40歳の父、リングネーム「ヴァンヴェール・ネグロ」もマスク越しに柔らかな視線を送った。

 福岡県糸島市出身のネグロは、福岡市でカフェを営みながら、全国各地を回ってレスラーとして活躍する。練習場に幼少の息子を連れて行くようになると、すぐに「自分もやりたい」と言うようになった。

 ネグロは5年前、メキシコで修行した。現地の熱気に魅力を感じ、帰国後も映像などでルチャリブレを見ていた。2019年、既に大人に交じって試合に出るようになっていたジャックは「メキシコに行きたい」と真剣な表情で父に訴えた。熱い思いを理解したネグロは、現地の知人を通じて短期修行の受け入れ準備を進めた。

 Tシャツなどの物販で得た収益と、趣旨に賛同してくれた支援者による募金は約1年で80万円に到達した。今年の夏休みを利用して現地で試合を行うスケジュールも組んでいたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、渡航は延期。今後の予定は白紙のままだ。

 中学3年生のジャックは、卒業後の進路を検討している。昨年は東京ドームで開催された試合に親子で出場するなど活動の幅を広げている。さらに、親子そろって熊本地震の被災地でのボランティア活動や各地の小中学校でいじめ撲滅の啓発活動などにも積極的に取り組む。

 このまま日本でレスラーとして実績を積みながら、いつかはメキシコへ-。ジャックの胸中を理解するネグロは「後押ししたい」と考えている。「ルチャドール」は、日本語では「自由を求めた戦士」という。一度はコロナに阻まれたメキシコ行きもあきらめていない。その日が実現するまで、二人三脚の親子の旅は終わらない。 (松田達也)

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