東京五輪開催を訴えた内村航平の覚悟「大変なことは承知の上」

西日本スポーツ 伊藤 瀬里加

 覚悟がにじむスピーチだった。8日に東京・国立代々木競技場で行われた体操の国際大会。閉会式で内村は一言、一言を丁寧に言葉を紡いだ。

 「コロナウイルスの感染が拡大し、国民の皆さんが『五輪ができないのでは』という思いが80%を超えているのが残念。しょうがないと思うけど『できない』ではなく、『どうやったらできるか』を皆さんで考えて、どうにかできるように、そういう方向に変えてほしいと僕は思います」

 試合後の記者会見。「スピーチは僕の本音です」と明かした。五輪の中止や延期を求める意見が8割を超えるアンケート結果もある。この数カ月間のニュースを見て「それじゃいかん」と考え続けてきた。「僕は何もできないけど、世界にアピールするいい機会があったので。この場で言わないとたぶん届かない」。世間に一番訴えかけられる場をあえて選び、自分の言葉で表現した。

 新型コロナの感染拡大後、初めて日本に海外の選手を招いた体操の国際大会はひとまず成功した。しかし、体操は選手同士の密着がなく、感染リスクが比較的低い競技だ。参加選手はわずか30人で手厚い対策も可能だった。五輪となれば格段に増える選手、関係者の安全確保は費用も手間も膨大だ。内村が「偽陽性」となり、今後への課題も残した。内村自身も「非常に大変なことであるというのは僕も承知の上」と語った上で、「東京五輪をできないと思わないでほしい」と願った。

 日本のスポーツ界には選手が声を上げにくい雰囲気がある。内村もこのスピーチで非難を浴びることを覚悟していただろう。それでも動いた姿に女子の寺本明日香は「私たちも言いたかったけど言い出せなかった。あの言葉で世界中の方の思いが東京五輪に向けて動いたと思う」と感謝した。

 国際オリンピック委員会のバッハ会長が来日し、16日には菅義偉首相と会談するなど東京五輪を巡る動きは新たな局面を迎えようとしている。もちろん、「開催すべきでない」と考える選手もいるだろう。開催について賛成、反対、どちらが正しいということではなく、現場で聞いた内村のスピーチはアスリートの純粋で強い「思い」を感じ取ることができた。 (伊藤瀬里加)

PR

スポーツ アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング