工学部卒リケジョがボートの五輪候補に「延期にならなかったら…」

西日本スポーツ 末継 智章

 ボートの軽量級女子ダブルスカルで来年の東京五輪出場を目指す「リケジョ」漕手(そうしゅ)がいる。北九州市出身の山領夏実(29)=デンソー=で熊本大では都市開発の企業への就職を志していたが、工学部で培った力学的な考えがボートの世界で花開いた。体調不良の影響もあって厳しくなっていた五輪出場の望みが、1年延期に伴って復活。来春の代表選考にフル回転でチャレンジする。

■ペアの相手観察

 五輪が延期したことで不安が消えつつある。平均57キロ以下の軽量級で戦う山領は理路整然と自身の成長を説明した。

 「代表の試合が続いた昨年は筋肉の量を削って戦ったので体がしぼんでいた。体幹を鍛えたことで体のバランスが整い、安定してこげるようになってきた」

 競技を始めたのは福岡・東筑高に入学してから。高校や大学の全国大会に出たものの目立った成績はなく、大学3年時には都市開発系企業への就職を目指していた。だが、ボート選手として均整の取れた体に将来性を感じた実業団のデンソーに勧誘され、変わった。

 基礎からこぎ方を学ぶと年々タイムが伸び、入社4年目の2017年に日本代表入り。「加速的にボートが楽しくなった」。18年には大石綾美(アイリスオーヤマ)と組んだ世界選手権軽量級ダブルスカル女子で10位に入るなど結果も着実についてきている。

 元来の理系的な考え方が競技にはまった。「他人から言われても納得せずにやるのは嫌」という性格。大学で工学部建築学科を専攻したこともあり、てこの原理を使ったこぎ方はすんなり頭に入ってきた。「こいでいる最中もボートにどれくらい力がかかっているのか、頭の中でグラフが浮かぶ。頭を整理するのに役立っている」。頭もオールもフル回転してボートを水面で滑らす。

 ペアを組むダブルスカルでは相手のこぎ方を観察し、互いの力を生かせるよう調整して加速度アップに努める。「どんな相手とでも合わせられるのが強み」と、上田佳奈子(明治安田生命)と組んだ昨年のワールドカップ(W杯)では日本勢最上位の5位に入った。

■延期でチャンス

 考えすぎるあまり、昨夏からオーバーワーク気味になり、8月の世界選手権後から約4カ月間はほとんど練習ができなかった。心身の不安が残ったまま3月に熊本で五輪予選参加ペアを決める代表選考レースに臨むはずだったが、コロナ禍で来年2~3月に延期に。練習ができない間に読書や料理などで気分転換するコツも分かってきた。

 「延期にならなかったらつくれなかった時間だった。いい状態になってきている」。このまま右肩上がりのグラフを維持し、約3カ月後に迫る選考レースで主役に躍り出るつもりだ。 (末継智章)

PR

スポーツ アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング