男子マラソン福田譲 30歳の年に地元大手企業を辞め、未知の世界に飛び込む理由

西日本スポーツ 末継 智章

【記者コラム】

 「最速とか最強というより、最高のランナーになりたい」。陸上の強豪プロ「NNランニングチーム」にアジア人で初めて加入した福田穣(29)=福岡市出身=が18日の会見で示した抱負だ。理想の走者として同じチームのキプチョゲ(36)=ケニア=を挙げた。

 キプチョゲはマラソン男子世界記録(2時間1分39秒)を持ちリオデジャネイロ五輪で優勝した世界最速で最強のランナー。福田も「年齢を重ねてもスピードを維持できる理由を学ばせてもらいたい」と敬意を払うが、憧れる理由は別にある。「偉業を成し遂げても、ケニアの子どもたちと楽しそうに接していたり、どんな選手にも姿勢が低かったりし、当たり前のように接してくれる」からだ。

 福田自身は直接会話したことがないが、2018年秋にスポーツメーカーのイベントで来日した際は日本の若手ランナーたちと気さくに会話し、親身にアドバイスしていたという。キプチョゲの公式ツイッターでは地元住民や子どもたちと触れ合う写真が多くアップされ、今年9月にはツイッターで夢を追う若者をサポートする意思を表明し「誰もがチャンスを持つべきだ」などと訴えた。

 8月中旬に西鉄(福岡市)を退社してプロになった福田だが「実業団選手やプロは敷居が高いと思われがち。もっと市民と近い選手でありたいと常々思っていた」と明かす。西鉄時代から練習拠点の大濠公園(同市)で市民ランナーと触れあい、地元の福岡国際マラソンでも市民が作った横断幕を見て励みにしてきた福田らしい。来年からはケニアと福岡を行き来する生活になるが、陸上長距離の本場で得た知識や経験を福岡などの国内で還元する考えだ。

 年末に30歳を迎える中、地元の大手企業を辞め、コロナ禍に未知の世界に飛び込むのは大きなリスクがある。ただ、キプチョゲは18年9月に33歳で世界記録を樹立。翌秋34歳で非公認ながら人類初の2時間切りを成し遂げた。「チームが日本人最速のランナーではなく僕を選んだのは、成長を期待しているから。34、35歳ごろに引退するランナーが多い日本の概念を壊したい」と前を向く福田の決断を支持したい。 (末継智章)

PR

陸上 アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング