引退発表のラグビー五郎丸「仲間のためだから」に込めた思い

西日本スポーツ 大窪 正一

【記者コラム】

 2015年のラグビーワールドカップ(W杯)などで活躍した元日本代表フルバック(FB)五郎丸歩選手(34)=福岡市出身=が9日、来年1月から5月に開催されるトップリーグ(TL)を最後に現役を引退すると発表した。16日に記者会見を開く。

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 鋭い眼光で記者の質問に聞き入り、熟考。そしてゆっくりと丁寧に簡潔明瞭な言葉を紡ぎ出す。愚問を投げてしまったのかと、記者も試されている気持ちに襲われて一対一の取材はピリッとした緊張感があった。

 本格的に五郎丸の取材に関わったのは15年6月ごろ。同年秋のW杯イングランド大会を見据え、地獄と称された日本代表の宮崎合宿だった。当時のヘッドコーチは世界的名将エディー・ジョーンズ。理不尽と思える要求や過酷なトレーニングで選手たちはくたくたになっていた。

 練習終わりに練習場から宿舎への約300メートルのストロークが貴重な取材機会。極度の疲労とストレスで多くを語らない選手が多い中、五郎丸は常に誠実に対応してくれた。当時は副将。今のように注目されていない代表の露出を何とか増やそうと考える責任感、そして「歴史を変えてみせる」という気概が口を開かせていたのだろう。

 そのW杯で「世紀の番狂わせ」と世界を驚かせた南アフリカの撃破など歴史的3勝に貢献。国民的英雄になった。すると代表活動に区切りをつけ、所属のプレーとともに自らの発信力を生かしたラグビーの「伝道師」の役割に重点を移した。日本で競技を盛り上げるために何をすべきかを考えた末の決断に感じた。

 昨年のW杯前は、西日本新聞での不定期掲載のインタビュー企画の依頼を快く引き受けてくれた。後から聞けば、超多忙で多くのメディアの取材依頼を断っていたという。地元福岡の読者と共にW杯を盛り上げたい。そんな思いで時間をひねり出してくれた。

 格闘性の強いラグビーは時に痛みや恐怖を伴う競技だ。「仲間のためだからやれる」。この言葉を彼からはよく聞いた。自らが果たせる役割は何かを考え、それを貫き続けたラグビー人生ではなかったか。使命感にあふれた「漢(おとこ)」だった。来年1月からのラストシーズン。コロナ禍で埋没するラグビーの存在感を彼が際立たせることだろう。最後の使命を見届けたい。

(ラグビー担当・大窪正一)

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