【Fの推し増し】ひまわり組での悔しい「初日」、HKT上野が頑張り始めた出発点

西日本新聞 古川 泰裕

 12月9日、福岡市中央区地行浜の「西日本シティ銀行 HKT48劇場」。チームを七つに色分けした「博多なないろ」公演が終演したばかりのステージが、ピンク色のスポットライトで照らされた。ステージ下手から延びた花道で、取材を受ける「劇場の女神」上野遥(21)のためだった。以前からピンク好きを公言しており、現在は髪の色もピンクの上野。光に照らされて桃色に染まる毛先を揺らしながら、劇場スタッフの心遣いに「ありがとうございます」と、表情をほころばせた。

 21日、劇場公演の出演1000回にHKTメンバーとして初めて到達した。劇場公演をこよなく愛し「劇場の女神」と呼ばれていること。教えを請うメンバーを懇切丁寧に指導し、オリジナルのダンスも考案して「はるたん先生」とも呼ばれること。グループのため、仲間のためという自己犠牲の精神だけでなく「自身を認めさせたい」という自負も持っていること。ディープな彼女のファンであれば当然、ライトなファンでも知っているだろう。

 2012年9月30日の公演デビューから、積み重ねてきた歩み。「本当に、ただ好きなだけなんですよね」。あっけらかんと、その原動力を明かす。研究生公演でデビュー、翌日もステージに立ち、2日後には早くもアンダー(代役)としてチームH公演に出演していたというエピソードに「自分でもびっくり」と笑う。

 彼女が一躍注目を集めたきっかけは、なんと言っても指原莉乃が監督を務めたHKTのドキュメンタリー映画(2016年)だろう。誰よりもそこに立ち、愛していると自負する劇場のステージ。「選抜」メンバーに向ける複雑なまなざし、嫉妬や意地、そして終盤に訪れる喜びの涙が爽やかな感動を呼んだ。

 「気づいたらここまで来ていた」と話す、そんな彼女が劇場公演を「頑張り始めた」のはいつからか。研究生として、いち早くチームHの公演に出たこともきっかけのひとつと言えそうだが、2013年11月にスタートした「ひまわり組」の「パジャマドライブ」公演で「自分はそういうのが好きなんだなっていうことに気づき始めた」という。チームと研究生の垣根を越え、全員が出る「ひまわり組」の公演。全メンバーが「初日」を終えるまでには3日間かかった。1日目は最前線に立つ「選抜」中心の構成。上野の出番は3日目だった。

 「そこでもう悔しいじゃないですか。めっちゃ練習してぎゃふんと言わせてやろうと」

 意気込んで臨み、ユニット曲「パジャマドライブ」のセンターに立ったステージの評判は上々だった。「それが爽快感というか、うれしくて。やってやったぞ、私はここでこんなにできるんだぞって」。カラカラと笑った後に続けた。「誰に負けて悔しいとかじゃなくて、本当に…ぎゃふんと見せつけてやろうっていう気持ちが強くて。私は3日目だったから、もう2回目の人もいるわけじゃないですか。それも悔しくて。こんなに(公演が)好きなのにって。だからこの公演は一番多く出てやろうって決めた」。言葉通りに誰よりも数多く出演し「それも爽快」だった。

 悔しさを抱えた時、その思いをぶつけるステージがあった。見返すことができる機会があった。1000回という偉業も、それを積み重ねてきたということだろうか。そんな質問をすると「それこそ、公演っていう存在が48にあるから…」。言葉を選びながら続けた。「頑張る場所があるじゃないですか、みんな平等に。そのおかげなのかな。だから好きだっていうのもあったりしますね」。ステージでのパフォーマンスはうそをつかず、誰に対しても平等だ。

 12月9日、999回目の公演。一緒に「博多なないろ」公演に出演していた坂口理子に「こうして頑張っていれば、先輩やファンの方が見ていてくれると思わせてくれる」とたたえられた。「自分が重ねてきたことをそういう風に思ってくれて、伝えてくれる同期がいることに感動しちゃって」。数字は意識していなかったはずが、坂口の向こうでうなずく秋吉優花や後輩たちの表情がうれしくて、涙がこぼれた。「自分がいることって、ちゃんと意味があるのかなって」

 「誰が最初に1000回になるとかは気にしていないし、4桁に届くという実感もあまりないけど、重ねてきた回数には誇りを持って、HKTを支えていける存在になりたい」。今年1月の成人式でもそう話していたように、自身が重ねてきた回数を、ひけらかすそぶりはない。だが、ファンや周囲が彼女の偉業を喜び祝福することに「本当にうれしい」と笑顔を見せる。節目の日が近づくと、多くのスタッフから「何かできることはないか」と声をかけてもらったという。記事の冒頭で劇場スタッフがピンク色に統一した照明も、その一つだったかもしれない。「ここまで頑張ったら、スタッフさんやファンの皆さんにここまで思ってもらえるし、メンバーにも…(できているかどうかは)分からないですけど、いい背中を見せられるんだ、そう思ってくれる子が一人でもいたら。私を見て、公演を頑張ろうって思ってくれたらうれしいです」

 意地と矜持(きょうじ)と反骨心、そしてファンや仲間の喜びを力に変えて金字塔に到達した劇場の女神。999回目のステージでは「これまでと同じように、一回一回を大事にしていきたい」と語った。多くの人々に祝福された節目の日も、やがて他の公演と同じ「一回」になる。

 「1000回の後は何回を目指す?」。21日の終演後、最後にそんな質問をしてみた。いかにもマスコミらしい問いに、劇場の女神はいたずらっぽく笑いながら答えた。

 「1001回です」

(古川泰裕)

PR

HKT48 アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング