投手3冠ソフトバンク千賀が抱えた苦悩 エースと呼ばないで…グレていた前半戦

西日本スポーツ

 今季ともにタイトルを獲得して4年連続日本一に貢献した福岡ソフトバンクの千賀滉大投手(27)と石川柊太投手(28)が、伝説のエースと熱いトークを交わした。

 球団OBで沢村賞を2度獲得した斉藤和巳氏(43)=本紙評論家=と、番組収録で対談。新旧エースが「理想のエース像」を語る中、千賀は今季抱えていた知られざる苦悩を吐露した。2003年に20勝を記録するなどした大投手を前に、現在の「二枚看板」が追い求める理想の投手像を語った。

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 斉藤 今回は2人にとってのエース像というのを聞きたい。今は千賀がエースと言われている。千賀の「エースの定義」は?

 千賀 今年は本当にそのワードに苦しみました。今年は本当に振り幅がすごかったので、実感したものが強い。(シーズン)最初のころは、めっちゃグレてました。

 斉藤 何やグレてたって(笑)。

 千賀 シーズン前半は、僕自身マウンド上でそう(エースだと)思っていなかった。6回でいい、それが今の俺の実力だ、と思ってマウンドに来ていた。でも、周りの人からは「千賀、おまえだったら」というワードが頭につく。もちろんそれはうれしいことでもあるけど、今年に関してはそういう入りができなかった。本当にそう呼んでほしくなくて、ずっとグレてた。抑えたら「だよね」と言われて。打たれたら「どうした? 何で?」と言われる。でも、途中である程度吹っ切れて、逃げられないんだと感じました。

 斉藤 そういう立場に来たということでもある。周りからその立場にされたわけじゃないし、もっと言うと、それだけの給料をもらっているわけだから。周りと自分とのギャップがしんどかったということかな。

 千賀 そうですね。僕は「自分が」というタイプじゃない。周りの人が言ってくれるなら、というところはすごくある。今年は片足がリハビリ組に突っ込むくらいでシーズンに入って、そこまでのスイッチを押せていなかった。自覚のなさを痛感した。でも「このチームはおまえがやらなきゃダメだ」といろんな人に言ってもらって、逃げちゃダメだと思った。(シーズン途中から)いろんなことが吹っ切れて、マウンド上でも変わったところは正直ありました。

 石川 今年、千賀はエースに近づいたかなと思います。

 斉藤 近づいたということは、まだ認めてないということやね(笑)。

 石川 9月くらいに、切り替わったんじゃないかなと僕も感じました。マウンドでの振る舞いだったり。よく聞く「あいつとなら心中してもいい」じゃないですけど。

 斉藤 「エースの定義」というのは難しいよね。例えば(先発完投型の投手に与えられる)沢村賞の選考基準は7項目ある(※1)。エースと呼ぶ上で大事になってくることは何だと思う?

 千賀 和巳さんの2003年とか(18勝を挙げた)06年(※2)の成績とか、ああいうパッと見ですごいと分かる記録を僕はやったことがない。時代で片付けてはいけないけど、今は7、8、9回を抑えるスペシャリストがいる。こういう数字が付きにくい時代ですね。

 斉藤 監督や投手コーチとしては、まず7、8、9回に投げる投手をしっかり固めたい。時代で片付けたくないと言っていたけど、先発の投球回数が伸びにくかったりするのはしょうがない部分もある。

 石川 自分の中では防御率と勝利数は(沢村賞の選考基準に達して)なくても(エースとしては)いいのかなと…。結果的にそこがないと、投球回も伸びないのかもしれないけど。投げる姿とか、長いイニングを投げる方が「エース」と呼ぶ上で大事なことなのかな。「中継ぎを休ませてくれる」と思える実力と、使命感というところの方が大事だと思います。

 斉藤 今も常に長いイニングを投げ、完投したいと思ってマウンドに上がっているということかな。

 石川 完全試合を目指してやっている。今年初めて完投、完封(※3)できた。それをした時のチームの雰囲気だったり、中継ぎを休ませられたり、野手の負担を減らせたり、全ての面でプラスに働く。チームに対しての貢献度で完投や完封は大きいということを実感できた。長いイニングを投げるということが「エース」に近いのかなと思います。

 千賀 そこがエースというワードを語る上で、一番必要になってくるところ。どのチームもリリーフや7、8、9回を固めることから始める中、100球を超えても救援陣を出さなくてもいいパフォーマンスを出せる投手にならないといけない。少し語弊があるかもしれないけど、パ・リーグは先発が初回から全力でいかないといけないからこそ、7回以降の投手が大切になる。だからこそ、先発投手はもっともっと能力をつけないと、記録が伸びてきません。

 斉藤 2人とも長いイニングを投げたい、完投も意識してマウンドに上がっているということ。勝利数は打者との兼ね合い、ベンチが考えるゲーム運びなどでコントロールできない部分ではあるけど、共通しているのは毎試合長くイニングを投げさせてもらえるような姿を見せるということだね。その理想に近づけるように来季以降も頑張ってほしい。

 ※1 沢村賞の選考基準は(1)登板25試合以上(2)完投10試合以上(3)15勝以上(4)勝率6割以上(5)200投球回以上(6)150奪三振以上(7)防御率2.50以下。2000年以降、全ての基準を満たした受賞者は07年のダルビッシュ有(日本ハム)、09年の涌井秀章(西武)、11年の田中将大(楽天)、18年の菅野智之(巨人)。

 ※2 斉藤氏は2003年に20勝3敗、防御率2.83、勝率8割7分で最多勝、最優秀防御率、勝率第1位、沢村賞を獲得。20勝は球団では1976年の山内新一以来で、福岡移転後では現時点で唯一。06年には18勝5敗、防御率1.75、勝率7割8分3厘、205奪三振で最多勝、最優秀防御率、勝率第1位、最多奪三振、沢村賞を獲得した。

 ※3 石川は今年8月1日の西武戦(ペイペイドーム)で初完投初完封。被安打はスパンジェンバーグに浴びた1本だけ。自己最多の13三振を奪い、今季リーグ最短タイの2時間21分で試合を終わらせた。

«今月25日と来月8日にCSで放送予定» 3人の対談では今回の「理想のエース像」の他に、コロナ禍の影響を受け無観客試合や同一カード6連戦が行われた今シーズンの振り返りや、互いのピッチングフォームなどについて激論が交わされた。この模様は「PITCHER REVIEW『投手論』~斉藤和巳×千賀滉大×石川柊太~」として、25日午後9時からと来年1月8日午後7時からの2回に分けてCS「スポーツライブ+」で放送される予定。

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