就任1年目でJ1昇格、福岡・長谷部監督の手腕とは クラブ社長が明かす舞台裏

西日本スポーツ 松田 達也

 5年ぶりのJ1昇格を決めたアビスパ福岡の川森敬史社長(55)が本紙のインタビューで、新型コロナウイルス感染拡大による厳しい経営環境の中、J1昇格を達成した今季を振り返った。入場料収入は落ち込んだが、グッズ購入などでサポーターが支えてくれたことに感謝し、就任1年目で昇格に導いた長谷部茂利監督の手腕を高く評価。来季に向けてJ1中位を目指したチーム強化を行う考えを明かした。 (聞き手、構成=松田達也)

 -J1昇格に導いた長谷部監督の評価は。

 「勝ちにこだわったチームづくりをしてくれた。非常にフランクだが締めるところは締める。熱く語るところは語る。今の若い選手に響く指導法を持っている。選手には『シゲさん』と呼ばれている。自分から『監督でもシゲさんでもいいよ』と話している」

 -改めて長谷部監督にチームを託した理由は。

 「昨年の水戸(長谷部氏が監督)は、考えているベースがアビスパのスタイルに近いものだった。立石敬之顧問(シントトロイデン最高経営責任者)とJ1昇格、J1定着を目指すチームづくりを進める中でアドバイスもあった。その中で長谷部監督には直接話をさせてもらった。アビスパの考え方に共感してくれたと思っている」

 -チームマネジメントの特長は。

 「監督には『ロッカールームに入って、いいことも悪いことも共感してください』と言われ、今年はすべての試合後のロッカールームに入った。かける言葉やコミュニケーション、気持ちの乗せ方、立て直し方のうまさを見た。丁寧語を使って選手にピッチで指示をしているのにも驚いた。命令口調でないのは、選手をリスペクトしているからで、選手も大切にされている感じがするのではないか」

 -長谷部監督のサッカーの印象は。

 「今年はスタイルよりも勝ちにこだわることを優先している。今季のサッカーはやりたいスタイルではないと思う。今は勝ちにこだわっているし、そのやり方をクラブも尊重している」

 -経営的にも苦しい1年だったのでは。

 「今までなら昇格争いで観客が1万9000人ほど入った。今季は昇格争いになっても上限は1万人で、いい戦いをしていても5、6000人が精いっぱいだった。ものすごい単位での減収は事実。そんな中、あの手この手で、皆さんに支えていただいた」

 -具体的には。

 「グッズ販売では、ほぼ予定通りの利益を計上できる見込み。スタジアムに来ることができない皆さんにも、ウェブで買っていただいた。試合前の練習中にゴール裏で子どもたちがピッチの球拾いに参加できる権利を販売したら毎回満員になった。試合前にセンターサークルシートを広げる人も、一般公募したらチケットを買って、喜んでやってくれる方が出てきた。試合に勝った後の勝利グッズも、7月から販売したら400万円近くの売り上げになった」

 -コロナ禍だからこそ生まれたアイデアか。

 「サービスとして新しい価値観を提供できた1年でもあった。スタッフと考え、実行し、お客さんの感動を得て、クラブの財政的な力になった。約2500万円が集まったクラウドファンディング(CF)も売り上げに充てさせていただきたい」

 -スポンサーが800社に到達した。

 「ありがたい話。今年はスポンサーを降りる方はいなかった。『苦しいから(支払いを)分割にしてよ』というご相談は受けたので承諾させてもらった。そういう状況の中、地元のクラブを支えてもらい、感謝している。CFの返礼品にスポンサーの商品を付け、少しでも市場に流通させたいという思いもあった。スポンサーの要望に応え、価値向上をアビスパが手伝えるなら手伝いたいし、さらに増やしたい」

 -J1に昇格して戦力強化の費用も必要。

 「(社長に就任した)2015年から強化費を絞るという意識は持たずにやってきた。その考えありきで事業予算を組む姿勢を続けている。コロナ禍でも変わらない。来年も監督をサポートできるような予算を取って編成に当たりたい」

 -次はJ1昇格からJ1定着を目指す。

 「1年で上がって落ちる経験を(社長就任後に)1度した。今年はJ1に上がって定着できるチームをつくろうと、取り組んできた。予算も最低限以上、欲を言えば中位を目指したい。来年は4チームが降格する。まずはJ1に残れる編成にしたい」

 -来年に向けて。

 「昨年は16位という順位で終わり、改革宣言をした。変化をキャッチする敏感性、こだわりすぎない柔軟性、前向きな問題意識を持ちながら対応力を高めて改革することが大事になった。これは、コロナの対応にも当てはまる。チームも対応力を高めて結果に結びついた。コロナという経験のないものに立ち向かう中、チームもフロントも信頼し合い、意見を出し、尊重し、戦ってきたシーズンだった。これからも信頼関係を持ってやっていきたい」

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