ソフトバンク城島氏語る 甲斐への批判は当たり前

西日本スポーツ 久保 安秀

【ソフトバンク城島アドバイザー 新春インタビュー(後編)】

 福岡ソフトバンクの城島健司球団会長付特別アドバイザー(44)が、西日本スポーツの単独インタビューでチームを支える甲斐拓也捕手(28)について語った。

 海を渡って米メジャーで戦った日本選手ただ一人のキャッチャー。これまで多くを語ってこなかった「捕手論」とともに、苦悩していた甲斐とシーズン中に交わしたやりとりの一端を明かした。(聞き手・構成=久保安秀)

   ◇   ◇   ◇

 -チームは昨季、最高の形でレギュラーシーズンを終え、最高の形でポストシーズンを勝ち抜いた

 周りが言うように、ホークスと戦う相手チームにもプレッシャーはある。ジャイアンツは4連敗しちゃいけないとかね。でも、ホークスの選手も同じようにプレッシャーを感じている。それをはね返して四つ連続で勝つのは並大抵のことではない。チャンピオン同士の戦いで2年続けて4連勝。本当に大変なこと。選手は1段階も2段階も上がっている。

 -城島アドバイザーが米大リーグに移籍する前、00年代前半のホークスも本当に強かった

 今は本当に強いですよ。あんまり強すぎて「日本シリーズ、ちょっと面白くないね」という声も聞こえたけど、やっている選手は一日も早く終わりたいわけですよ。その中で勝つわけですからね。

 -甲斐の存在が大きかったという声があった

 (故障で)高谷がいないということもあって、レギュラーのキャッチャーとして9回を守った。最初から出て最後まで自分の代えはいないと思って戦った初めてのシーズン。日本シリーズも含め、彼が最後を仕上げるというか。初めて1回から9回までを考えなきゃいけないシーズンだった。

 これがレギュラーとしてのスタートライン。レギュラーは8回に代わってちゃダメなんですよ。甲斐は、レギュラーのキャッチャーとして、25、26、27(個目)のアウトを取るという難しさを経験した。そのシーズンに、クライマックスシリーズ、日本シリーズ全て(フル出場で)マスクをかぶれたのは、彼にとってもすごく大きな経験。ターニングポイントのシーズンになった。

 -甲斐はシーズン中に悩むことも多かった

 開幕から無観客が続いて、ホークスがスタートで出遅れた。チームの状態が上がらず、投手陣も与四球が多かったり、打たれたり、甲斐もいろいろ言われた。でも当たり前なんですよ。負けてるんだから、敗因がある。批判が甲斐にくるのは認められたキャッチャーだからですよ。高給取りになったから。(年俸が安かったら)言われないですよ。それが投手の救い、工藤監督の救いになって、チームの救いになる。

 -甲斐の悩みを解消したと聞いた

 それは甲斐に聞いてください。自分には分かりません(笑)。何度か甲斐の話は聞きましたよ。悩んでいる内容も聞いたけど、レギュラーの(捕手が持つ)悩みだった。逆に言うと、やっとそこに来たかという話。以前は、ボールを受けないピッチャーがいたり、9回に代わったりね。甲斐の一本立ちはチームにとっても本当に大きい。工藤監督からしたら、こんなに“楽なこと”はないと思う。

 -レギュラーの捕手としてやるべきことがある

 1試合でいうと25、26、27個目のアウトを考えて、勝ちゲームを逃げ切っていく必要があるし、負けゲームでも明日の試合を考えないといけない。そうなってくると、1週間(どう配球するか)を考えるし、その6連戦を考えるということは、折り返しの6連戦も考えないといけない。次のカードで同じ先発同士が投げ合うこともある。特に昨年はそれが多かった。勝ちゲームの中で布石を打つ必要があるし、負けゲームの中で得るものもある。

 -どんな話を

 甲斐に言ったのは「やっとレギュラーのキャッチャーの話になったな」と。甲斐が「ジョーさんも悩んでたんですか」って言うから「あったり前よ」って。「この悩みをクリアしたら、また大きな悩みが来るんやで」と。悩みが消えることはないんだから。

 ただ「その悩みをクリアした人じゃないと見られない壁があるぞ」って。その壁を越えたら、何もないかと言うと、もっと大きな壁がくる。自分たちが見てないでっかい壁を王さんも見ているだろうし、工藤さんも見ている。どこかの壁で打ちのめされて、野球をやめる時がくるんだろうけど。

 野村(克也)さんはもっともっと先の壁を見ただろうしね。甲斐は「悩みってなくならないんですね」って言うから「今の悩みでそんな考え込んでたら、次の壁は越えられんぞ」って(笑)。

 -キャッチャーは奥が深い

 今、気付きました(笑)? キャッチャーって1人だけファウルグラウンドにいるんですよ。そして1人だけ反対方向を向いているんですよ。だから甲斐には「おまえが悩んだり、自信なさそうだったり、下向いたりしたら、みんな見ている。一番近くで見ているのがピッチャー。もちろん監督も、相手チームも、バッターもファンも見ている。レギュラーでいる以上はそんな姿を見せちゃいけない」って。

 自分なんかはそういうのを隠すのがだんだんと上手になっただけです。

 (おわり)

 ◆城島健司(じょうじま・けんじ)1976年6月8日生まれ。長崎県佐世保市出身。大分・別府大付(現明豊)高からドラフト1位で95年に福岡ダイエー(現福岡ソフトバンク)入団。2003年最優秀選手(MVP)。06年から米大リーグのマリナーズでプレー。10年に阪神入りし、12年限りで引退した。日本代表では09年WBCで優勝。日米通算成績は1837安打、292本塁打、1006打点、打率2割8分9厘。昨年、福岡ソフトバンクの球団会長付特別アドバイザーに就任した。

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