高校ラグビーの新伝説「ロスタイム18分」死闘が生まれた理由

西日本スポーツ 大窪 正一

【記者コラム】

 全国高校ラグビー大会は桐蔭学園(神奈川)の2連覇で幕を閉じた。第100回の節目にコロナ禍に見舞われ、無観客での開催となった異例の大会。4大会ぶり7度目の覇権奪回に挑んだ東福岡(福岡第1)は4大会連続で4強にとどまったが、開催の可否の不安を抱えながら、新たなスタイルも示して常勝軍団復活への種をまいた。担当記者が感じたヒガシの強さや取り組みを振り返る。

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 ここまでFW戦にこだわるのか。驚きを感じたのが歴史的死闘となった3日の準々決勝、東海大大阪仰星(大阪第1)戦のワンシーンだった。後半のロスタイムも9分を経過したころ、敵陣深くで反則を得たが「サヨナラPG」を狙わずスクラムを選択。正キッカーが負傷交代して代役キッカーは後半23分にPGを一度外していたとはいえ、それほど難しくない位置だった。

 「たら、れば」の話はあまり好きではないが、このPGを決めていれば18分超のロスタイムはなかった。極限まで疲労を蓄積することなく、準決勝の京都成章戦に臨めたのではないか。昨夏合宿の練習試合では桐蔭学園を17-14で破っていた。覇権奪回のポイントだったようにも思う。

 しかし、ヒガシの選手に迷いは見られなかった。「自分で判断し自分をコントロールできる」。藤田雄一郎監督は今年のチームへの手応えをそう口にしていた言葉が脳裏に浮かんだ。頂点から3大会遠のき、1年生から3年生まで花園の優勝を知らない。「3連覇時代や3冠を果たしたチームはコンタクトが強かった」と藤田監督。原点に立ち返るように1対1で負けない強さを求めた姿勢を最後まで貫いた。

 グラウンドをワイドに使った華麗な展開力のイメージが強いヒガシだが、確かに常勝期は1対1でしっかり縦突破することで圧力がかかり、横への展開がより効果的だった。解説で花園を訪れ、母校の奮闘を見守った元日本代表SHの村田亙氏(専大監督)も「(連覇に貢献した)布巻(峻介、パナソニック)の時代はFWも強かった」と指摘する。

 昨年はコロナ禍で3月の全国選抜大会などが中止。6月中旬までのチーム練習ができない期間は、個人練習で肉体改造に力を注いだ。走行距離などを計測するため衛星利用測位システム(GPS)を使って選手の体調管理にも本格的に取り組み、けが人を出さずに最大限の効果を生み出すように努めた。スクラム強化では九州内の強豪大学に「出稽古」するなどFW勝負への意識を高めた。

 バックスも能力の高い選手がそろい、一発でトライを取り切る力は持っていた。だが、打倒ヒガシを狙うライバルチームはその対策に近年力を入れてきていた。再び頂点に立つためには新たなスタイルを模索する必要があった。今年はまずFW勝負。その姿勢がぶれなかったからこそ、石見智翠館(島根)との3回戦もFW戦で薄氷の逆転勝利を手に入れられたのだろう。

 4大会連続で決勝に進めなかったとはいえ、FW戦にこだわったことで新たな引き出しを増やしたのは収穫だ。今後への布石になったのは間違いない。力強いFW戦はライバルチームに脅威に映ったはず。従来の強みである鮮やかな展開力とのバランスを図っていけば、フェニックス(不死鳥)が再び大きく羽ばたく時も遠くないと感じさせた大会だった。(大窪正一)

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