成長し続ける「やさしいはな」 HKT秋吉、かつての「最年少」が大人の仲間入り

西日本新聞 古川 泰裕

 HKT48の新成人メンバー9人が櫛田神社(福岡市博多区)に勢ぞろいした11日。2期生の秋吉優花(20)は王道とも言える赤色の晴れ着に身を包み、朝の澄み切った空気の中で満開の笑顔を見せた。2012年9月にデビューしてから約8年半。11歳だった少女は名実ともに大人の仲間入りを果たし、グループの新成人を代表して「試行錯誤しながら『楽しい』をいっぱい見つける年にしたい」と誓いを述べた。

 乗り越える壁など前に存在しないかのように、ひょうひょうと笑いながら新たな挑戦を続けてきた。取材でも、自身の苦しみをことさら深刻に語ることはほとんどない。プレッシャーのかかる大きな舞台や、緊張する場面は「地獄でした」と言葉も強く振り返るが、その前には往々にして「いやぁ」が付く。笑いながら短く語るその姿は、変わることのない前向きな姿勢、そしてしなやかさと知性を感じさせる。

2013年。ミカンを手にポーズを取る(右から)秋吉優花、宮脇咲良多田愛佳村重杏奈

メロンジュースを作る先輩がうらやましくて…

 加入当初は、最年少メンバーらしく天真らんまんな笑顔でファンを魅了した。テレビのレギュラー番組で、メロンジュースを作る先輩がうらやましくて顔の形が変わるほどガラスに張り付いた。ビーチフラッグに挑戦した時には、口の中まで砂まみれになりながら笑い転げた。どちらも、ファンの心に強く刻まれているシーンだろう。

 ただ無邪気なだけでなく、コメントも当意即妙。指原莉乃から「おにぎり」といじられ「シンプルブス」と返した胆力とセンス、頭の回転の速さは、幼い頃から光っていた。14年の九州ツアーのステージでは、おにぎりのかぶりものを頭に装着し「恋するフォーチュンクッキー」をセンターで踊った。必要以上にキレキレのダンスで客席を爆笑させたのも懐かしい。

 多くの人に好感を抱かせる愛嬌(あいきょう)、頭の切れ、ステージで思い切って表現できる度胸。舞台に立つ人間として必要な素養を、早い段階から見せてきた。13年リリースの2ndシングル「メロンジュース」で表題曲を歌う16人に初選抜。グループを代表する曲のオリジナルメンバーとして名を連ねた。HKTにはその後、3期生として矢吹奈子田中美久が、ドラフト2期生として今村麻莉愛が加入。5期生では石橋颯後藤陽菜乃らが存在感を見せている。年少メンバーの活躍は、HKTにとって特長であり未来でもあるが、秋吉はその系譜の始まりと言ってもいいだろう。

 加入時に幼さが目立つアイドルは、そのイメージからの脱却に苦しむこともある。しかし、秋吉がその枠に収まっていたようには見えない。4thシングル以降は表題曲の選抜メンバーには入っていないが、指原莉乃座長公演ではオーディションを勝ち抜いて博多座のステージに立った。その後、何度も共演を重ねる「大人のカフェ」との第1回コラボレーションコント劇でも主役を務めた。

AKB48グループ歌唱力No.1決定戦で「アイノカタチ」を熱唱

変わらぬ熱量、オリジナル曲に込めた思い

 役者としての経験を積む一方、独力でギターを学び、作詞や作曲にも貪欲に挑戦した。2020年、新型コロナウイルス禍に苦しんだグループが多い中、変わらぬ熱量を保ちながらSNSに弾き語りの動画などを投稿。20歳を迎える直前に公開したオリジナル曲は、自身の名にちなんだ「やさしいはな」だった。

 「その先がどうしても見たくて ガラスに頰押し付け 君に笑われたあの日から-」

 懐かしい場面を思い出させる始まりから、曲はゆったりとした流れのまま「いっぱい笑い合って 特別な時間過ごしたよね」と、ともに歩んだ日々を歌う。

 「辛(つら)い日があっても そんなのどうでもよくなるくらい 君と一緒だから強くなれた、優しくなれた」

 後半は、メンバーにもファンにも向けたととれる、これまでとこれからの「出会いへの感謝」をつづる。

 「会えなくなっても、またいつか、きっと。」

 あまり苦しむ姿を見せない心の内が、歌となってそこに刻まれていた。

 一度は収まりを見せたかのようなコロナ禍が再び猛威を振るい始めた20年の末。東京・赤坂で開催された「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」ファイナルの舞台で、秋吉はMISIAの「アイノカタチ」を選んだ。

 幼いころから舞台度胸のある彼女。ステージで朗々と熱唱する姿にもう驚きはないが、磨き上げた歌声にのせた普遍的な愛と感謝は多くの人の心を揺さぶり、4位という結果となって表れた。

 ひょうひょうと、笑いながら挑戦を続けてきた。そのスタンスは今後も変わることはないだろう。そんな彼女にも苦しんだ日々は確かにあるが、それをともに歩んできたファンとメンバーへの愛と感謝もまた揺るぎない。

 「博多に咲く、やさしいはなになりたい」

 劇場公演で披露する自己紹介のキャッチフレーズ。咲かせてきた花の一輪一輪には大小もあるが、それはいずれもファンの歩く道に優しく寄り添い、ふと目に留まれば力をくれる。

東京なら「ヒョウ柄とか選んでいたかも」

 「東京で成人式が開催されていたら、赤の晴れ着は着ていなかった。個性を出さなきゃって、ヒョウ柄とか選んでいたかもしれない(笑)。福岡で、めでたい赤を着られて良かった」

 櫛田神社の飾り山笠の前でそう明かし、メンバーや集まった親族らを和ませた。人生の節目にあっても、自然体で温かい。そのぬくもりは「やさしいはな」と呼ぶにふさわしいだろう。

 彼女の前に道はない。彼女の後には、優しくかれんな花が咲く。グループの10周年という節目も、ひょうひょうと優しく、その道のりを彩ってくれるだろう。 (古川泰裕)

 

PR

HKT48 アクセスランキング

PR

注目のテーマ

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング