「人」という字は…ソフト上野由岐子が感じること 金八先生との違い

西日本スポーツ 末継 智章

 ソフトボール東京五輪代表候補の上野由岐子(38)=ビックカメラ高崎=が本紙の電話インタビューに応じ、開幕まで23日であと半年に迫る東京五輪への思いを語った。中止の声も多く聞かれる状況を冷静にとらえながら、日本のエースとして金メダルを狙う使命感を強調。さらに今年のテーマを表す漢字1文字に「人」を挙げた。その理由とは―。(聞き手・構成=末継智章)

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 1年延期となり「五輪イヤー」となった2021年。上野は今年のテーマを表す漢字1文字に「人」を選んだ。同郷の武田鉄矢が「3年B組金八先生」で語った「人という字は、人と人が支え合っている」が有名だが、上野は1画目と2画目の違いに着目した。

 「2画目の人が支えているからこそ、1画目の人たちはさらに駆け上がっていける。漫画『宇宙兄弟』にあったフレーズで、共感した。私は支えられている側。支えている人たちの思いを大事にして駆け上がっていかなければいけない。今年は五輪をイメージしている年なので、そういう思いを大切にしたい」

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、中止の声も多く聞かれるようになった。それでも上野は冷静に半年後に目を向ける。

 「決めるのは自分ではない。今は五輪が開催されることに関し、準備を重ねていくだけだと感じている」

 五輪金メダルの目標を北京でかなえた後、上野は競技の振興と後進の子どもたちに夢を与えるための「使命感」で競技を続けてきた。13年に東京五輪開催が決まり、16年に追加種目としてソフトボールが選ばれた。再び五輪制覇を期待されても心境は変わらず、金メダルへの執着心はなかったという。それが19年4月に下顎(かがく)骨を折って変化が起きた。

 「それまでは日本代表でのプレーも、やらされている感覚が大きかった。でもあごにボールが当たり、ちょうど平成から令和になるタイミングで手術した。『令和からニュー上野』というふうに切り替えるきっかけになり、金メダルに対しても使命感を抱くようになった」

 ソフトボールは24年のパリ五輪で再び除外されることが決まった。28年のロサンゼルス五輪で復活するためにも、東京五輪での戦いぶりが大事になる。

 「ソフトボールという競技をより知ってもらうために活動していくしかない。引退後のことはあまりよく考えていない。現役である以上、しっかり結果を出して注目してもらい、知ってもらうことを大事にしていきたい」

 1月からは日本代表で上野と「二枚看板」を担う藤田倭(長崎県佐世保市出身)がビックカメラ高崎に加わった。前所属の太陽誘電では日本リーグで優勝経験がない藤田にとって、今季3連覇が懸かる強豪への移籍はプラスになると捉える。

 「将来的に日本のエースになってくれることを期待している選手。これからはメンタル面を伝えることになるのかな。連覇が懸かる中で勝ち続ける難しさは、自分たちにしてみれば当たり前で慣れているが、彼女にとっては新しい経験。今までとは違うプレッシャーを彼女なりに感じるだろうし、その中で結果を出していかないといけない。指導できることがあれば伝えていきたい」

 昨秋の代表合宿中は「個人的に強い相手と戦いたい」と海外勢との実戦機会を願っていた。しかし1、2月に予定していたオーストラリアや米国遠征はコロナ禍で中止になり、緊急事態宣言が発出されたため男子選手と練習予定だった高知合宿もなくなった。厳しい現実を受け止めながら、本番で最高のパフォーマンスが出せる方法を模索し続ける。

 「しょうがない。限られている環境の中でどうやっていくか求められる。今は直球主体の投球を考えているけど、体の状況も考え方も変わる。ベストパフォーマンスができる手段を常に考えている」

 ◆上野由岐子(うえの・ゆきこ)1982年7月22日生まれ。福岡市南区出身。小学3年時に花畑ブルージェイズでソフトボールを始める。柏原中-九州女子高(現福岡大若葉高)。高校卒業後の2001年に日立高崎(現ビックカメラ高崎)に入社。04年アテネ五輪は銅メダル。08年北京五輪は決勝トーナメント3試合の2日間で計413球を投げ、金メダル獲得に貢献。世界選手権は12、14年に連覇。174センチ、右投げ右打ち。

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