「甲斐キャノン」を分析の専門家はこう見る 記録には表れない“本当”の守備力と課題とは?

西日本スポーツ 森 淳

 福岡ソフトバンクの甲斐拓也捕手(28)がいよいよ正捕手として一本立ちした。かねて盗塁阻止能力の高さで知られるが、捕手の貢献度を従来の公式記録だけで知るのは難しい。プロ野球のデータを独自に収集、分析するDELTA(デルタ)の協力で甲斐の真価を測り、球界ナンバーワン捕手を目指す上でのテーマを考える。(構成=森 淳)

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 甲斐をスターダムに押し上げた要素が「キャノン」の異名を取る盗塁阻止能力なのは言うまでもない。盗塁阻止率は2017年リーグ3位(3割2分4厘)→18年1位(4割4分7厘)→19年4位(3割4分2厘)→20年2位(3割2分8厘)で推移。この盗塁阻止の中身が、セイバーメトリクスの手法で精査されている。

 デルタによるデータ視点の守備ベストナイン「1.02 FIELDING AWARDS」の昨季選考にあたり、アナリスト八代久通氏が独自に分析を行った。一つは走者の能力(盗塁成功率)を考慮した阻止の評価。ここで昨季12球団トップは森(西武)になった。盗塁阻止率自体は特別に高くなかったが、刺すのが難しい走者に企図されたケースが多かったとの考察。甲斐は4位だった。なお各数値は「失点を何点防いだか」と考えれば良い。

 もう一つは抑止評価。走者が企図できる状況で、実際に何回走られ、走られなかったか調べ、盗塁を許した際に見込まれる失点をどれだけ防いだか分析。するとトップは梅野(阪神)で、甲斐が続いた。昨季に関して言えば、キャノンの効果は阻止自体よりも抑止に表れたようだ(どちらも三盗、本盗は企図されていない捕手が多いため、比較できる二盗に限り分析)。

 同氏の分析で甲斐がトップになったのはブロッキング評価だ。昨季ワンバウンドになった投球が、細分化したコース別、捕手がミットを動かした距離別に、どれぐらいの割合で暴投、捕逸になったかを集計。平均と比べ、どれぐらい暴投、捕逸を防いだかというものだ。甲斐はここで優れた能力を示し、パワーピッチャーが多いソフトバンク投手陣をカバーしたとの見方。評価は若月(オリックス)と双璧だった。

 セイバーメトリクスでも捕手の守備評価は研究中の分野と言えるが、近年ではフレーミング(ストライク判定を促す捕球技術)の分析が確立されてきた。同氏のブロッキング評価で分かるようにデルタでは細かいコース別の投球データを収集しており、それをもとにフレーミング評価の試みも始まっている。コース別に、シーズンのプロ野球平均に比べ、その捕手がどれぐらいストライク判定を引き出したかという具合だ。

 甲斐はこのフレーミングに課題があるとの評価だ。前述の「FIELDING AWARDS」で昨季はアナリスト9人による投票結果で12球団4位。フレーミング評価が響いた。具体的には高めが得意で、左右打者ともインハイに長所がある。半面、右打者の外角低め、左打者は内外角とも低めで苦労したようだ。ここで1位評価だった木下拓(中日)は、反対に高めをやや苦手にしたが、低めでストライクを拾いまくったという。

 表を見ても分かるように、フレーミングは捕手の守備評価への影響が強い。そのため、米国でもフレーミングの評価が始まった当初、計算の間違いではないかと驚きの声が上がったほどだという。一つの見方には違いないが、9回で27個のアウトを奪う上で、1ストライクの価値がどれだけ高いかということだろう。

 ◆分析の詳細はデルタの運営するデータサイト「1.02 Essence of Baseball」のコラムで。https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53669

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