元選手の新人広報が頭悩ます「バランス」コロナ禍で無観客のソフトバンクキャンプ

西日本スポーツ 山田 孝人

〈鷹番が見た〉

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない状況でスタートしたプロ野球の春季キャンプ。宮崎市の生目の杜運動公園を拠点とする福岡ソフトバンクも第1クールの3日間を終えた。期間中の無観客開催が発表されるなど異例の「コロナ禍キャンプ」。受け入れ側の宮崎のバックアップを受けながら球団は試行錯誤を重ね、2年連続のリーグ優勝と5年連続の日本一への土台づくりを進めている。

■スタンドで見学

 詰めかけたファンが出迎える姿も歓声もない。例年ならば高揚感に包まれる球春の2月1日、宮崎市の生目の杜運動公園。春季キャンプがいよいよ始まるという実感が湧かなかった。選手らはマスク姿で言葉を発することもほとんどなく、粛々とロッカーに入っていく様子が印象的だった。

 週末なら2万人を超えるタカ党が集った人気球団のキャンプは様変わりした。取材も異例の連続だ。記者にとって1年のうちで一番長く同じ時間を過ごすことができ、選手の話を聞くことができる大切な期間。これまでならば練習場所を移動する選手にぶら下がって話を聞き、その日の動きを原稿化する。さらにシーズンで使うとっておきの“ネタ”をこつこつためていく作業も大事な仕事だが今年は禁止だ。人数制限での代表取材制で必ず質問ができるわけではない。グラウンドには球団関係者以外一切立ち入れず、スタンドから目を凝らすしかない。もどかしさばかりが募る。

 それでもこの苦境の中で球団が選手らの感染防止策を徹底しつつ、最大限に力を伸ばし蓄えられる環境整備に心を砕いていること。受け入れ側の宮崎もできる限りの支援をしていることは第1クールで感じられた。「宮崎県、宮崎市の皆さまに感謝している。(球団を含め)多くの方の苦労があったと思う」。工藤監督がそう口にしたのも同様の思いからに違いない。

 選手ロッカーはメイン球場内に加え、新たに2棟のプレハブ小屋を増設して「密」防止を図った。各建屋には入場人数に制限もある。内部には「マスクなしでしゃべらない」「ロッカー滞在を短く」「他チームメンバーとの接触を避ける」との球団指示が掲げられている。食堂も1席ずつ透明のパーティションで区切られている。

■選手も我慢連続

 無観客が強化に与える影響を懸念するのは王球団会長だ。「人の目があると、見られているという緊張感の中でできる。それが大きいんだけど、今年はそれがないからね…」。感染防止と強化、広報のバランスをいかに保つか。「選手目線」で思考を巡らせたのは昨季限りで現役を引退し、球団広報に転身した西田哲朗氏だ。報道陣と選手が社会的距離を保てるように柵などを設けて同公園内の動線に気を配る一方、安全を考慮しながら報道陣が見られる範囲を広げたという。

 数日早く宮崎入りし、公園内を歩き回りながら検討した西田氏は意図を説明する。「無観客だけにファンに選手の動きなどを多く知ってもらいたい。選手も見てもらっていることが励みになる。例えば特守などは本当はきついだけ。でも視線があると、下手なところは見せられない。だから頑張れるんですよ」

 無観客でのキャンプは地元経済にとっても痛手だ。同公園内に毎年ずらりと並んでいた土産物売り場なども出店はない。例年なら多くの人でにぎわう市街地もまばら。昨年の経済効果は約124億円。宮崎県観光協会にも出店者や市街の飲食店から諦めの声が届いているという。

 それでもホークスを受け入れたのは、これまでの信頼関係と未来を見据えた上でのことだ。宮崎側も球場に出入りするスタッフに週1度のPCR検査を行うなど感染防止策を施す。「応援しているし今年も優勝して、これからも(宮崎で)」と同協会。熱意と試行錯誤の上に、コロナ禍キャンプは成り立っている。 (山田孝人)

PR

福岡ソフトバンクホークス アクセスランキング

PR

注目のテーマ