最強ソフトバンクにある「研究開発」部門って何だ? その仕事内容は

西日本スポーツ 森 淳

■キドコロ研究開発中?担当スタッフは「城所氏」球団OB城所龍磨氏と意外な縁も

 5年連続日本一を目指す福岡ソフトバンクの宮崎春季キャンプは実戦段階に入った。ポジション争いが本格化する一方で「R&D担当」が奮闘している。R&Dとはリサーチ&ディベロップメントで、研究開発のこと。メーカーやITを中心に多くの分野に広がりつつあるが、プロ野球チームでは? 今キャンプで行われている「R&D」の取り組みとは―。実態に迫った。(取材・構成=森 淳)

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 「R&D」には今キャンプ第3クールから各日数人ずつが参加している。室内練習場の一角。野手が手にしたバットのグリップには「ブラストモーション」と呼ばれるスイングの速度や軌道を測る機器が装着されている。上半身の拘束具のような「Kベスト」は、動作の連動性や効率を測る。別の日には投手がセンサーを装着してブルペン投球。モーションキャプチャ「オプティトラック」で動作を解析する。フィードバックは後日、ビデオ会議アプリなどを使って行われる。

 これらの取り組みを任されているのが城所収二R&D担当(35)だ。元高校球児でスポーツ科学博士。バットとボールの衝突運動を研究してきた。球団に入る前は国立スポーツ科学センターで主に卓球を担当。バイオメカニクスの先端を担ってきた。球団OBで元外野手の城所龍磨氏(現球団職員)と親戚関係はないが「出身が隣の街、同学年ですし私は存じていました。入団当初、名字で知ってもらいやすかった」と笑う。

 R&D担当は昨年、球団のチーム戦略室に置かれた。契機は2019年の秋キャンプ。米大リーグの選手らが利用し、日本でも浸透しつつあった米トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」のスタッフを招き、選手の動作解析を行った。

 首脳陣や選手の反応も踏まえ、導入にあたって球団は考えた。チーム戦略室の須山晃次室長(43)は「彼らとの提携も一つだが、球団内で人材を抱えてやれるのでは?という発想になった。バイオメカニクス、データサイエンスなどを研究し、活動している人をリクルートした」と言う。

 測定機器や分析システムが増え、採れるデータも増えたが、的確に読み取り、活用できなければ効果は乏しい。選手や首脳陣に、どんなデータを提供するか。昨年、福岡県筑後市のファーム施設で始動した城所担当も「かなり考えました。イメージできるものに重きを置きました」と言う。

 専門的な数値なら、身近な数字に置き換える必要がある。必要に応じてグラフなどビジュアル化した。その仕事は発掘や翻訳のようでもある。データにハイスピードカメラの映像も組み合わせ、見た目に分かりやすくもした。最初の1、2カ月はフィードバックする中身の吟味に費やした。

 スタッフは今年1人増えて2人になったが、それでもフィードバックに数週間が必要。時短が課題で、お家芸の人工知能(AI)活用も今後のテーマだ。また、測定はあくまでも練習のみ。選手に機器を着けて試合に出てもらうわけにもいかないが、近年は映像を使ってAIで動作解析する技術も発達してきた。城所氏も「近い将来(機器を装着しての測定と)精度の遜色ないAIアルゴリズム(計算手法)が出てくるのでは」と注視を続ける。

 引き続き筑後を活動のベースに、今年は選手を定期的に測定する。並行してペイペイドームでの計測環境も整備。新たな機器の導入も検討中だ。須山室長によると、動作解析のほか選手の育成方針、コンディショニングなど、さまざまな情報を体系化してデータベースにするアイデアもある。城島球団会長付特別アドバイザーは選手育成の「マニュアル化」を提唱したが、共通するような考えだ。

 新たな取り組みに理解があり、特にIT関連を奨励する球団の土壌もある。楽天やDeNAなど他球団も力を入れている分野だが、城所氏は「ホークスでやっていることが他球団に波及していくぐらい先頭を切っていかないと。そう思って日々取り組んでいます」と力を込めた。

 ◆須山晃次(すやま・こうじ)1977年5月16日生まれ。浜松市出身。浜松北高から早大、ローソン野球部を経て米インディアナ大の大学院でスポーツマネジメント専攻。米大リーグ・ジャイアンツ傘下1Aでのインターンやマネジメント会社、データ分析・配信会社を経て、2019年にソフトバンク球団入り。

 

 ◆城所収二(きどころ・しゅうじ)1985年12月20日生まれ。愛知県新城市出身。新城東高から中京大に進んでバイオメカニクスを学び、早大大学院でスポーツ科学博士に。国立スポーツ科学センターを経て、2020年1月からソフトバンク球団R&D担当。

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