トップリーグ開幕を前に思う 「多様性」と「ワンチーム」で国民の心を捉えたラグビーの力

西日本スポーツ 大窪 正一

【記者コラム】

 あの熱狂は再び戻るのか。コロナ禍で仕切り直しとなったラグビーのトップリーグ(TL)の開幕が近づいている。先週、一足先に開幕した下部のトップチャレンジリーグでは、選手の口から無事にプレーができた安堵(あんど)と喜び、感謝の言葉があふれた。

 日本代表の史上初の8強入りに沸いたワールドカップ(W杯)日本大会は、もう2年前になる。にわかファンを生んだ追い風の中で迎えた昨季のTL開幕節の観客は、前季より約3万人も多く「W杯効果」を裏付けた。だが、コロナ禍の影響でTLはシーズン途中の中止に追い込まれた。

 日本代表の強化活動にも影を落とす。昨年はW杯で激闘を繰り広げたアイルランドやスコットランドとの対戦など全てのテストマッチが中止。W杯以降、代表の強化活動は途絶えている。

 1月16日に開幕予定だった今季TLも再びコロナ禍に見舞われた。今後も見えない敵との闘いは続く。苦境にあるのは間違いない。だが、W杯効果が全て消えたわけではない。W杯の日本の躍進でTLの存在が注目され、海外のスター選手がこぞって来日。これまで以上に質の高いプレーをTLで観戦できるはずだ。

 来季から新リーグに刷新されるため、今季がTLラストイヤー。日本代表を引退し、医学部受験を目指しながら、グラウンドに立つWTB福岡堅樹(パナソニック)の勇姿も見納めになる。今季限りでの現役引退を発表した元日本代表FB五郎丸歩(ヤマハ発動機)も引退へのカウントダウンに入る。日本協会で代表強化を担当する藤井雄一郎ディレクターは2年後のW杯フランス大会を見据え、TLから新たな人材発掘を図ると明言。代表を狙う若手のパフォーマンスも見逃せない。

 新型コロナ感染防止策を徹底し、数多くの観戦者の中で大人数の肉弾戦が繰り広げられるTLが順調に開催されれば、開幕を控えるプロ野球やJリーグも参考にできる点は出てくるだろう。

 コロナ禍で東京五輪の開催可否を巡る懐疑論や「女性蔑視」発言などで、日本スポーツ界への視線は厳しさを増している。2年前、日本代表が多様性を力に「ワンチーム」で困難を乗り越えた姿は国民の心を捉えた。ラグビーが閉塞(へいそく)した社会にプラスの影響を何らかの形で与えることもできるはず。そう信じている。 (大窪正一)

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