「宝物のような時間」HKT『劇はじ』涙の千秋楽 駆け抜けた20公演

西日本新聞 古川 泰裕

 裏方から俳優まで、制作の全てをメンバーが手がけるオンライン演劇企画「HKT48、劇団はじめます。」(劇はじ)が28日、千秋楽を迎えた。5日間でそれぞれ10回ずつ、全20回を駆け抜けた2劇団「ミュン密」と「ごりらぐみ」は、この日もビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を活用し、分割された画面の中で熱演。卒業式のシーンが追加されるなど、特別な演出が施され、千秋楽を盛り上げた。20日の初日以降もさまざまなメディアでその取り組みが報じられた「劇はじ」、それぞれの最終公演は約1400人が〝来場〟したという。

 昨年10月に発表され、フルリモート演劇の雄「劇団ノーミーツ」のバックアップを受けて進んできた。石安伊が脚本、田島芽瑠が演出を担当した劇団「ミュン密」の「水色アルタイル」は、新型コロナウイルス禍でも諦めずアイドルを目指す高校3年生を主人公にした王道の爽やかな青春活劇。オンライン授業を模したシーンでは、美術や音楽など裏方を務めたメンバーも登場。ゲームや料理、お菓子を食べたり、おもちゃのワニに手をかまれたり、それぞれ公演ごとに異なる動きでファンを楽しませた。

 クライマックスでは、劇中で結成された5人組ユニット「しゅがーすたー」が田中美久作詞の主題歌「水色アルタイル」を、文化祭さながらに体育館で披露。千秋楽のみ追加された卒業式のシーンには再び裏方メンバーも登場し、物語としても座組としても「最後のホームルーム」の様相となった。教師役の上谷圭吾(劇団ノーミーツ)の「それぞれ一人一人がたくさんの不安を抱えながら過ごしてきたと思う。その不安と戦って、もがいて、苦しんで、乗り越えて今がある。どんな形であろうとも、これが皆さんの青春」という言葉には、荒松希望役の松岡菜摘も涙を見せた。

 前日の夜公演から目を潤ませていた主役の「針間るな」役の石橋颯。「つらいなって思う時もあったけど、演出の(田島)芽瑠さんがいたからここまで来られたし、役者のみんなも裏方のメンバーも頑張っているのを見ていたからこそ、たくさん支えてもらって乗り越えられた。最高の思い出になりました」と再び感涙。三嶋リリカ役の村上和叶も「宝物みたいな時間だった」と笑顔を見せていた。

 舞台をけん引した演出の田島は「始まったら本当にあっという間。HKT48がすごくパワーアップできた。メンバーも作品との向き合い方や、今までになかった武器が増えたと思う」と企画を通して得た収穫を実感。「みんなの頑張りが報われて良かった」と語った。

 豊永阿紀が脚本を書き下ろし、下野由貴が演出を務めた「ごりらぐみ」の「不本意アンロック」は、人間同士のすれちがいや誤解が生むひずみにSF要素を絡ませる設定。緻密に練られたせりふ、日に日に熱を帯びる役者の演技、物語の中で回収されていく伏線の数々は視聴者の関心も高く、無料通信アプリLINE(ライン)に用意された「ネタばれあり」のオープンチャットは終演後も盛り上がった。

 最終公演の感情をぶつけ合うクライマックスシーンでは、感極まって出演者のほとんどが実際に涙を流す熱演ぶり。坂本愛玲菜が作曲と歌唱を担当し、脚本の豊永が作詞した主題歌「カギトナル」も、初めてフルバージョンが披露された。

 終演後、主役の「後藤佳」を演じた堺萌香は「無事に10公演を終えることができて感謝の気持ちでいっぱい。不安だったけど、いろんな人に支えてもらって最後までやりきることができた。すごく楽しかった」と涙を拭いた。最終公演でせりふが増えた未来人・エニシ役の松岡はなも「一生忘れない」と話した。

 舞台をけん引してきた下野は「無事に千秋楽を迎えられたのは、役者のみんなが役に向き合ってくれたからでもあり、スタッフやメンバーが支えてくれたからでもあり、ノーミーツの皆さんによるサポートのおかげ。本当に感謝の気持ちでいっぱい」と充実した表情。「この作品のことを、忘れないでいてくれたらうれしい」と呼び掛けていた。 (古川泰裕)

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