「野球していていいのか」ソフトバンク上林が明かした10年前の苦悩と恩返しの原点

西日本スポーツ 山田 孝人

 福岡ソフトバンクの上林誠知外野手(25)が東日本大震災の発生から10年を迎えた11日、“第二の故郷”東北を勇気づける活躍を誓った。2011年から宮城・仙台育英高で3年間を過ごし、自主トレをともにしていたヤクルトの内川聖一内野手(38)と復興支援活動も行ってきた。きょう12日からはヤクルトとのオープン戦(神宮)。“師”の前で快音を響かせることはもちろん、シーズンでも復活を果たし、明るい話題を届ける決意だ。

野球していいのか

 2011年の「3・11」からちょうど10年。東京移動前にペイペイドームでの全体練習で汗を流した上林は濃密な時間を過ごした東北に思いをはせた。「東北に対しては特別な思いがあります。父も岩手県の出身ですし。僕も仙台育英高で3年間を過ごした」。今は大学生の弟が宮城県在住なだけに、強く心を寄せる。

 高校進学直前のことだった。埼玉県内にある中学校で強い揺れに見舞われた。ほどなく東北地方の状況も知った。「どうなるんだろう」。不安が募った。入学式は4月末に。車で仙台へ向かったが高速道路から見える景色は、入試で訪れた際とは一変していたという。強いショックを受けた。

 「野球をしていていいのだろうか」。本心からそう思った。校舎が被災したため、授業もプレハブ小屋で受けた時期も長かった。それでも周囲の手厚い支えがあったからこそ、震災の影響が色濃く残る街で野球に打ち込ませてもらえた。感謝の思いが、2年夏から3季連続で甲子園に出場した原動力だった。「(東北のために)甲子園の優勝をしたかった。それはかなわなかったけど…」と当時を回想する。

 だからこそ、プロでの一層の活躍を示した上での恩返しを目指す。昨年からはコロナ禍にも見舞われているだけに、野球ができることへの感謝の思いは募る一方だ。18年に全試合出場し22本塁打を記録。だが直近2年は負傷もあり本来の輝きからはほど遠い。「今年一年は自分にとっても大事になってくる。しっかりと活躍をした上で、東北の復興に対して手伝えることがあれば」と節目の一日に完全復活を誓った。

もう一度ここから

 12日からは神宮でソフトバンクから内川が加入したヤクルトとのオープン戦に臨む。自主トレで師事していたことはもちろん、内川が開く福島県などでの野球教室に同行して復興支援活動も経験。野球人としても、一人の社会人としても成長させてもらった恩人の前で元気な姿を披露するつもりだ。「オープン戦だけではないですけどね。シーズンを通して活躍し、いい報告がしたい」と誓った。

 春季キャンプから好調をキープしていた一方で、3試合連続で無安打に終わっているが焦りはない。「今はキャンプからの疲れがあると思う。変に考えすぎて悪いほうにいかないように。もう一度ここから上げていく」。思いを新たに、節目の21年シーズンへ備える。 (山田孝人)

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