どれだけ決められなくても上がり続けたトス 「何で私に…?」迫田さおりが気づいたこと

西日本スポーツ

 ◆バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」

 好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪での銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げる一方、新型コロナ禍が続く東京五輪イヤーの今年、スポーツの魅力を発信しようと初めてペンを握った。

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 ありがたいことに、ユニホームを脱いだ今も「バックアタック」が代名詞となっています。ただ、私一人でつくり上げた攻撃ではありません。得点は三位一体から生まれます。レシーブをして、トスを上げてくれる人がいたからこそ。中でもセッターの2人、竹下佳江さん(現Vリーグ姫路副社長)と中道瞳さん(同東レコーチ)は恩人です。

 東レの先輩で2歳上の中道さんには誰よりも多くトスを上げてもらいました。高校を卒業して思うようにスパイクを打てない時期から、中道さんが現役を引退するまでです。全体練習で疲れているはずなのに「打ちたかったら、いつでも呼んでね」と自主練でも声を掛けてもらいました。バックアタックも「ちょっと打ってみたら」と誘ってもらったのがきっかけです。

 忘れられない試合があります。リーグ戦で、私のアタックが次々と相手ブロックに引っ掛かり、ポイントを奪われる場面がありました。負けられない試合で、普通ならその時点で他の選手に切り替えるところ、中道さんはずっと上げ続けてくれました。最初は「何で私に…」と疑問でした。何度も何度も上げてくれたトスから想いが伝わってきました。きっと「諦めるな! 頑張れ!」との力強いメッセージが込められていたのでしょう。単なるトスではなく、本気で想ってくれるからこそのトスでした。

 この試合で、私は最後までトスに応えられませんでした。ふがいなさ、歯がゆさを感じながらも、ある感情がこみ上げてきました。中道さんの意図が他の選手にも伝わり、コート内だけでなく、外にいるチームメート全員が背中を力強く押し続けてくれました。

 妥協を許さない中道さんは人と人のつながりを大事にする方でした。視野がとても広く、選手のわずかな変化にも気が付く。自信を持てなかった私が「自分の弱さ」から逃げないように、負けないようにつなぎとめてくれました。自分を必要とし、高めてくれる場所で頑張りたい。高校から入って右も左も上も下も分からない中、育ててくれました。11年間、東レ一筋でプレーした一番の理由です。

 竹下さんはとにかく大きな存在で、一言一句に重みがありました。先日、テレビ局の企画で銅メダルを獲得したロンドン五輪のメンバーが集まりました。収録では、やはり竹下さんが自然と中心になってくださり、皆が話しやすいように場をまとめてくれました。トスワークと同じです。

 日本代表で一緒に戦った現役時代、竹下さんのトスはタイミングが絶妙でした。ブロッカーを振ってもらったおかげで、周囲から「よく決めてたね」と言ってもらえたのではないでしょうか。私はただ助走して跳んで、無心でボールを打ち抜いていただけ。あの韓国との3位決定戦、最後の25点目に全てが凝縮されています。アタッカーまでボールをつないでくれるチームメートがいて、打つときも一人にしないで共に攻め続けてくれる。ボールを通して得られる一体感こそ、バレーの魅力なんです。(バレーボール女子元日本代表)

 ◆迫田さおり(さこだ・さおり)1987年12月18日生まれ。鹿児島市出身。小学3年で競技を始め、鹿児島西高(現明桜館高)から2006年に東レ入団。10年日本代表入り。12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪出場。17年現役引退。身長175センチ。スポーツビズ所属。

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