五郎丸歩の「ラグビー観」を変えた海外体験 担当記者の目

西日本スポーツ 大窪 正一

 今季限りの引退を表明していたラグビー元日本代表FB五郎丸歩(35)=福岡市出身=が24日、現役生活に別れを告げた。所属するヤマハ発動機が東京・江戸川区陸上競技場で行われたトップリーグ・プレーオフ2回戦でクボタに12-46で敗れ、今季の全日程を終えたため。10日のパナソニック戦で脚の肉離れをしたという五郎丸はベンチから外れ、スタンドで観戦した。

 3歳から始まった楕円(だえん)球の道はピッチ外で終止符を打つことになった。今季限りでの現役引退を表明していた五郎丸。日本ラグビーの歴史を変え、その人気をけん引した使命感あふれる「漢(おとこ)」が静かにジャージーを脱ぐ。

 2年前。ワールドカップ(W杯)日本大会開幕に向けた西日本新聞での不定期連載のインタビュー企画に応じ、定期的に話をしてもらった。頭の中はラグビーで埋め尽くされているはず。そんな勝手なイメージはいい意味で覆された。

 佐賀工高から早大で3度の大学日本一。日本代表57キャップ。2015年のW杯の南アフリカ戦で歴史的勝利に貢献し「五郎丸ポーズ」で国民的英雄となった。ラグビーにささげてきた人生と言っても過言ではない。

 だが「人生には他にもいろんなことがある」と否定した。15年のW杯後にオーストラリアとフランスでプレーした経験で、人として文化的で豊かな生活があってこそのラグビーだと気付かされたという。「それまでは勝つこと、結果を残すことが全てと思い込んでいる自分がいた」

 接した海外の選手は考え方が柔軟でオンオフの切り替えがうまい。競技そのものを楽しみ、たとえピッチに立てなくても自らを追い込むことに迷いがない。彼らから人としての器の大きさを感じた。人間力を磨く-。人生の一つの答えが出た。

 現役ながら「ラグビーの発信役」として畑違いの九州国立博物館でトークショーをしたり、柔道男子日本代表の井上康生監督らと小学生対象のスポーツキャンプをやったり。愛するラグビーを通じ、人としてどう成長できるかが心の芯にある。そして35歳で第一線を退く初志貫徹の決断もその延長線上にある。

 一見、不本意に映る今回の“終幕”も平然と受け止めたに違いない。20日の自身のツイッターに「僕の引退に『終わり』を見る人がいるかもしれない。これは『始まり』。どんな立場であれ『不可能』なんてありえない」などと記していた。不器用を自認する男。これからも自らの意志に忠実に、そして武骨に突き進むのだろう。 (ラグビー担当・大窪正一)

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