五郎丸と同学年35歳の引退決断 “もう1つの日本代表”にかけたラグビー人生…「耳」が物語る生きざま

西日本スポーツ 大窪 正一

【記者コラム】

 鈍く光るあのいぶし銀の輝きが、もう見られないと思うと正直寂しい。2016年リオデジャネイロ五輪でラグビー7人制男子日本代表も務めた桑水流裕策(コカ・コーラ)が、所属チームの年内廃部の決定を受けて現役引退を表明した。

 ラグビーを始めた鹿児島工高時代は全国的に無名だった。「荷物持ちで呼ばれたのかと…」と自身も驚いたという福岡大時代の05年に7人制代表に初選出。そこから、後に「ミスターセブンズ」と称されるまでのキャリアが動きだした。

 愚直に体を張るプレースタイル。激しいタックルを繰り返すことで耳がこすれ、腫れて血がたまった「ギョーザ耳」がその証しだ。格闘性が強く、痛みや恐怖と隣り合わせのラグビーは人間性がさらけ出される。桑水流が競技仲間やファンからリスペクトされ、慕われる理由がそこにある。

 15人制でも日本代表入りしたが、注目度は低くても7人制への愛着は強かった。「光が当たる日を信じ、7人制への誇りと意地で突き進んだ」。かつて口下手だった彼が脂汗をかきながら真っすぐな思いを語ってくれた姿が記憶に残る。一歩一歩しっかりと足場を固めて歩み、周囲に推される形で主将に就いたリオ五輪は一つの集大成だ。優勝候補ニュージーランドを破るなど4位入賞。全6試合に先発出場し、背中で引っ張った。

 コロナ禍で東京五輪への挑戦は断念した。そして今回は思わぬ形での「終幕」。企業スポーツの現実を突きつけられ、無念の思いもあるだろう。3日の自身のインスタグラムでは「より良いスポーツ環境を整えることに自分なりにどう貢献できるかを模索中です」と記していた。

 同じ九州出身で今季限りで引退となった五郎丸歩(ヤマハ発動機)=福岡市出身=とは同学年の35歳。くしくも新たなステージも同じスタートだ。五郎丸も現役時代から柔道男子日本代表の井上康生監督らと小学生対象のスポーツキャンプを実施するなど日本のスポーツ文化発展への貢献を見据える。桑水流は「これからの活躍を期待してます。そしてそれに負けないように私も頑張りたいと思います!」と刺激を受ける。7人制と15人制の「九州の雄」の歩みは止まらない。 (大窪正一)

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