田中正義を変えた内川の言葉「おまえだけが可能性を閉ざしている」

西日本スポーツ

【放送席 インタビュアーのこぼれ話】

 オープン戦まっただ中。開幕も見えてきた。投手陣の陣容、打順を想像する楽しさは、この時期ならではだ。

 2月は宮崎で福岡ソフトバンクのキャンプを取材。番組や試合実況はあったが、日々の締め切りはない。記者が「ネタ」を求めて奔走するのを尻目に、生目の杜を気ままに歩いた。

 ある朝、心を動かされる言葉に出合った。工藤公康監督が今春初めて打撃投手を務めた日。第2球場のB組(2軍)集合にメディアは私しかしなかった。田中正義が今季の決意を述べる「声出し」に臨む。1軍ではとっくになくなった「声出し」も、2軍ではまだ生きている。

 「5年目の田中です」と切り出した。2016年ドラフト会議で5球団競合の末にホークスが引き当てた右腕は、度重なる故障と不振でいまだに勝ち星がない。その彼が「今年は1軍で活躍できるという自信があります」と言い切った。

 「うん?」と耳を寄せる。田中は理由も語り始めた。昨季の2軍最終戦で「人生で一番良い球を投げることができた」。その後、この試合を最後にホークスを去った内川聖一(現ヤクルト)にあいさつすると「おまえ以外のみんなが『おまえはできる』と思ってるのに、おまえだけが可能性を閉ざしている」と言われたという。

 キャンプでの田中は吹っ切れたように明るくはつらつとしていた。だからすぐ活躍できるほど甘い世界ではないことも承知だが、人を動かし、その気にさせる「言葉の力」に触れて心がほっこりした。

 実はその2軍最終戦で私は放送席にいた。精進せねば、取材を尽くして言葉を磨かねば、と改めて思った宮崎の朝だった。(フリーアナウンサー・久保俊郎)

 

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