「人前用」の自分つくった過去、登場人物と重ねた HKT神志那インタビュー詳報

西日本新聞 古川 泰裕

神志那結衣インタビュー詳報

 5月19日開幕のリモート演劇「ありのままに生きろ。今」で初の主演に挑戦するHKT48の2期生・神志那結衣(23)。神志那と、作品を手掛ける「img」主宰の谷口航季へのリモートインタビューを詳報する。 (聞き手は古川泰裕)

 -4月29日にキャストが発表され、現在稽古中。どうですか?

 神志那「1対1のシーンが多い。まだ昨日(5月2日)で3回目の稽古。初めてというくらい大人数で稽古をしたんですけど、話したことがなかった役者さんがたくさんいて、すごく緊張しました」

 谷口「最初に台本の読み合わせをして、シーン稽古というか『ここのタイミングでビデオをオンにしてください』っていうことも伝えつつ、実際に1シーン1シーンを詰めている工程に入っているところもある。期間としては序盤ではあるけど、割と順調に稽古できているかなと思います」

 -「img」について教えてください。

 谷口「すごくさかのぼると、高校時代から映画研究部という映画を撮る部活をやっていて、創作という活動には興味があった。映画を作ったり舞台を作ったりという大学に進学して、そこで初めて演劇に携わることになった。その課程で、演劇の『やろう』と言って人を集めて、という速度感は映画よりも速いと思った。伝えたいことや、今思っていることを形にするには演劇が一番いいんじゃないかと思い、自分の団体『img』を2016年にスタートさせた。今回の『ありのままに生きろ。今』は、面接をテーマにしているが、僕らは選ばれる側というか、そういう立場にいる。もちろん僕は選ぶ側にもいるが、そういうことに対して思ったことを形にしたいなと思った。(舞台での)演劇にとどまらず、オンライン演劇や映像制作、イベントなどさまざまな形で発信できたらという思いで続けている」

 -2019年に舞台で上演した作品をコロナ禍の“仕様”に再編した。

 谷口「19年に上演したものは、うちの特長でもある群像劇。神志那さんが演じる『しおり』という主人公はいるが、年代を分けていろんな人物の視点で描きたいというのが作品の特徴。バイトの面接であったり、就職面接の面接官側だったり、オーディションに挑む俳優さんの視点だったり、学校の面接だったり。いろんな人たちの視点を描きたいというところからスタートした。1人の主人公だと選ばれる側の視点がフィーチャーされがちだが、群像劇にすることによって、いろんな人の面を描けるのではないか。舞台版もそうだが、エンターテインメントとすると地味な方なので、客席の真ん中に舞台を置き、お客さんから挟まれる形で上演した。面接は1対1で向き合う仕様になるが、客席からも背中越しに一方を見られるという、舞台っぽくない、映像のような作りをした。どこか日常というか、もしかしたらこういう人がいるかもしれない、という風景を切り取るような意識をした」

 -人物の内面に向き合うテーマ。

 谷口「人間、誰しも本音でしゃべり続けるわけにはいかない。エンタメでは問題や事件に焦点を当てがちだが、日常で何かを思っている、もしかしたらどこかにいるかもしれない人の話となった時、どこか建前というか強がっている部分の中に、ふと、その人の人間らしさというか、本音がこぼれる瞬間というところに、見ている人は何かを見いだせるのではないか。それぞれ『就職活動中の女性』や『面接官になる男性』などの設定は漠然とあった。その登場人物を、めちゃくちゃ掘り下げて考えた。なぜ『しおり』は高学歴なのに面接に落ち続けているのか。『なんで私は受からないのか』と考えている子だが、なぜそういう子になったのかということを、自分の中で考えた。こういう環境で、こういう思いで生活をしてきて、いざ選ばれる立場になって、それが実を結ばない。なんでだろう? 誰かに頼ることもできないのはなんでだろう? ということを、自分なりに考えて文章にして『佐藤しおり』という人物を理解して台本を書き始めた。こういうときは強がるな、と『しおり』になってみたり、何かアイテムはないかと思ってみたり。舞台では履歴書がキーアイテムになったが、私はずっとこうだった、でも何もできなかった、という部分に結びつく。『しおり』が面接に受かるという物語も当然あるとは思うが、どう変わることができるか、ということを意識して書いた」

このテーマはすごい、出合えてよかった

 -誰かに選ばれるという経験は身近にある。

 谷口「誰しも経験がある普遍的なものを描きつつ、『しおり』のようにずっと面接に落ち続けているような…。マイノリティーな人にもちゃんと寄り添えるように描いている」

 -神志那さんも所帯の大きいアイドルグループの一員として誰かに「選ばれる」立場。

 神志那「私自身もずっとそうだった。自分が『選抜』に選ばれるために、どうしたら人気が出るんだろうって考えたとき、本当の私では勝負できないと思った。本当の私だったら、しっかりしたことは全然言えないし、本当はすごく心が弱い。誰かを引き連れていく、率先していくことが、ずっとできない。選抜に入るため、人気を得るためには、ちゃんと『人前に出る用』の自分をつくっていかないと駄目だな、と思って、ずっとつくっていた部分があったので、それと(作品とを)重ね合わせた。なんでこんなに、いろはすさん(谷口)は人生を描けるんだろうって。(台本を)読んだ時、本当に自分の心に刺さりました。本当の私で戦うって、すごく怖いことだと思うから、このテーマはすごいなって。出合えてよかったと思いました」

 -キャラクターをつくっていたことがあるからこそ、できることもある。

 神志那「そうですね。そういう過去もあったから…弱い部分を見せないでおこうって…今でも思いますけど…。ちょっとは見せた方が、ファンも助けてくれるというか、ついてきてくれる。強がってしまうことは仕方がないけど、人間的な部分は、人と関わる上で大事なのかなと思いました」

 -オンライン演劇になってどう変わったか。

 谷口「リモートで、画面越しだからこそできる会話などがあるのではないかと、コロナ禍の創作では意識してきた。面接やオーディションが、リモートに姿を変え始めているということを受け、画面越しに誰かを見るということが、より難しくなったと思った。コミュニケーションも難しく、今見えているものがその人の印象という状態で、誰かに選んでもらうことは非常に難しい。2021年にリモート作品にスイッチさせたとき、変わらないものもあるし、変わるものあるということを描けるのではないかと思った」

 神志那「見えない部分で人間の素って出ると思うから、見える範囲が狭い分、難しいなと思うことはいっぱいありますね。ちょっと落ち着きがなかったら、きっと足だってブルブルしているだろうし。でも、それはリモートだと見えないし」

 -確かに足元は見えない。

 神志那「その分、リモートってすごく便利だなと思うし、自分をよく見せようと思えば、それに特化しているのかなと思います。画面上では、どうとでもできるし」

 谷口「それゆえの葛藤というか。補正とか背景とか照明とか、リモート面接を調べると、そういう部分でよく見せようという部分がある。それはちゃんとした自分が選ばれているのかという、リモートならではの悩みというか。そこですら、選ばれないということもある。それが面白いというより、ありそうだなと。上はスーツでも下がパジャマで『立ってください』と言われて、ドキッとしたとかいう話を聞くこともある。神志那さんが言ったように、今ここで映っていることしか描いていないから、『しおり』が『Zoom』の画面を切った後は見られないが、見終わった後に想像できるというか。きっと『こうだったのでは』と、想像できるような形になればと思う」

 -椅子を蹴っているかもしれない。

 神志那「叫んでいるかもしれないですね(笑)」

 谷口「なんだよ、あの面接官!って(笑)」

 -演出の変化は。

 谷口「ベースでそんなに変えている意識はないが、コロナ禍での見せ方などにおいて、こう思っているという部分は垣間見える部分もある。何もなくなったときの自分をあらためて実感したとき、思うことはあると思い、新規で書き下ろしたセリフもある。先日、じーなさん(神志那)に稽古で演じてもらったが、そのシーンは、画面越しという形式でないと絶対やれないと思いながら作った。なぜ、リモートなのかという疑問もあると思うが、リモートにはリモートでやれる伝え方がある。演劇は舞台上と客席という違いがあるが、リモート演劇は全員が画面を見ているという状況が一緒。その状態だからこそ伝えられるというシーンも描いている。ちょっとしたネタバレだが(笑)。順位があるわけじゃないが、ここは見てほしい、という場面。リモート演劇でないと無理だ、というシーンになっていると思う」

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