ダルビッシュも同調した「QSへの提言」工藤監督が本当に伝えたいこと

西日本スポーツ

 低調だったソフトバンク打線が久しぶりに火を吹いた。5日、甲子園での阪神戦で11安打10得点。今季交流戦ビジター8試合目にして初勝利を挙げた。

 チームが大勝する一方、工藤監督が投手指標の一つクオリティースタート(QS)の扱いについて述べた意見が話題になった。前日4日、試合前の取材に応じた際に「米国は中4日だから(QSが)素晴らしいと言われている」などと話したもの。中6日が主流の日本でQSを定義するなら「もう1回伸ばして7回ぐらいでもいいんじゃないか」と持論もぶった。これに米大リーグ・パドレスのダルビッシュも呼応。発言を伝える記事を引用し「これはほんまにそう。中6日、6回3失点でQSはちょっとなぁっていつも思う」とツイートした。

 QSは米国発の指標で、先発投手が6回以上を投げ、自責点3以内に抑えると記録される。米大リーグでは先発投手5人、中4日でローテーションを組み、1試合100球前後で降板させることが多い。これは1970年代半ばから採用された方式で、それから各球団へ浸透し、QSが提唱されたのは1980年代半ばだという。

 工藤監督の意見に戻ると、QSに関する発言は当日の先発・石川の話題で出たものだった。今季の開幕投手で、先発ローテの関係でエース級との投げ合いも多い。そこまで10先発でQSはリーグ最多の9度。それが“好投の割に白星に恵まれていない”ことへの説明として扱われることも多い。そういう流れの中での言葉だった。

 日本でも登板間隔の変遷はあったが、現在は中6日がスタンダード。まず1軍(メジャーリーグ)の試合に出られる選手登録の枠に日米で違いがある。原則として日本は29人で、そのうち25人がベンチ入り可能(コロナ禍の特例で、それぞれの枠は昨季から一時的に拡大されている)。先発しない投手がベンチ登録を外れて休養を与えられる、いわゆる「あがり」があるのはこのためだ。米国は26人で、ベンチ入り人数も同じ(昨季はコロナ禍の特例で拡大)。先発投手が占められる枠は、より少なくなる。

 日程の傾向や移動距離など、日米の違いは他にもあるが、いずれにせよQSが「及第点」とされる前提が異なる。こうした違いを踏まえず米国流の指標を“直輸入”すれば、本来の意味から離れてしまう。工藤監督はことさら厳しい口調で追及したわけではないが、報道してきた側には耳の痛い話である。QSに類するハイクオリティースタート(HQS=7回以上、自責点2以下)という指標もある。日本ではこの辺りを物差しにすべきなのかもしれない。

 工藤監督の発言をもう少しさかのぼる。5月30日、巨人戦の試合前には、中4日で先発してきた巨人戸郷の話題に「うちのピッチャーにはいないのかな。(体が)強いねぇ」と漏らしてもいた。有り体な枠にはまらず、スケールの大きな存在であってほしい。そういう思想が通底しているのを感じる。

 現役通算224勝。472先発で116完投。先発4試合に1試合は完投している計算だ。日本プロ野球最長タイ記録の実働29年を誇るレジェンド。比較対象とするにはあまりにずぬけた存在だが、トレーニング理論、栄養面、ケアも、現在と比べるべくもない環境での記録である。そのいずれにも一家言ある工藤監督のことだ。自らの経験から同じ価値観を求めている、と見るのではなく、現役選手のポテンシャルを信じている、と捉えるのが適当だと思っている。(森 淳)

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