最終選考の場、選手は葛藤とも闘いながら…元バレー代表・迫田さおりが見た現日本代表

西日本スポーツ

バレーボール女子元日本代表・迫田さおりさんコラム「心の旅」

 好きな言葉は「心(こころ)」だという。バレーボール女子元日本代表のアタッカー、迫田さおりさんは華麗なバックアタックを武器に2012年ロンドン五輪での銅メダル獲得に貢献した。現役引退後は解説者などで活躍の場を広げる一方、コロナ禍が続く中、スポーツの魅力を発信しようと自身の思いをつづっている。

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 昔から花が好きです。バレーボールが人生の真ん中にあっても、心のどこかで「お花屋さん」に憧れている自分がいます。彩りにあふれた花に囲まれていたいからかもしれません。現役時代は頻繁ではなくても節目で手にする機会がありました。ロンドン五輪の表彰式では、ブロンズ色のメダルと一緒に花束をいただきました。サイズは小ぶりでも、緊張や重圧からの解放を実感させてくれました。

 東京五輪を目前に控えた今の女子日本代表を表現するなら、バランスの取れたきれいな“花束”でしょうか。イタリアで開催中のネーションズリーグ(VNL)で、自分本位なプレーヤーは見受けられません。五輪前最後の国際大会で、ある程度先発メンバーを固定して戦いながらも、全員で引き立て合っています。

 副キャプテンとなった25歳の古賀紗理那選手からは覚悟が伝わってきます。打ち抜くのが難しい後方からのトスも、ただ相手に返すのではなく、力強いスパイクでフィニッシュしています。練習で努力しているからこその技術です。コートでは一分の隙も見せないという強い意思を感じます。

 同じアタッカーの21歳、石川真佑選手はチームで最初に打つサーブを含めて常に「攻めている」印象があります。苦しい展開でも「何とかしてくれる」との期待を抱かせてくれます。23歳の黒後愛選手の持ち味は強打だけではありません。相手の嫌がるところに落とすフェイントやプッシュには、次の手を出しにくくさせようとする意図が込められています。点を決めるだけでなく、守りもサーブもできてこそエースと呼ばれる存在になれます。信頼を勝ち取ろうと、ひたむきな彼女たちの表情にもぜひ注目していただきたいです。はじけるような笑顔には、人を元気にするビタミンが詰まっていますから。

 世界の強豪16チームで争うVNLは五輪へ向けて現在の17人を12人に絞る最終選考の場。選手は葛藤とも闘っていることでしょう。その中で今のチームは「代表に残りたいからアピールする」というよりも自分の役割を探しつつ、求められていることに全力を尽くそうとしているように映ります。速い攻撃やテンポの良さだけではない部分が上位4チームによる決勝トーナメント進出だけでなく、見ていて楽しいバレーにつながっている気がします。

 選手という「花」の色はそれぞれ異なります。小さくまとまったブーケでも、花の向きや組み合わせで見栄えは変わります。チームも同じです。一人一人の個性や状態を見極めて、調和の取れた花束に仕上げているのが中田久美監督です。その花束も日々違う姿にアレンジされています。

 お互いを高め合うことができる関係を築いているからこそ、誰もが主役になれる。花、つまり選手の特性を最大限に生かそうとするスタッフ個々にもカラーはあります。選手だけでなく、スタッフを含めた「女子日本代表」なんです。東京が舞台となる今夏は、強くて美しい花束を全員でつくり上げてくれるはずです。(バレーボール女子元日本代表)

 ◆迫田(さこだ)さおり 1987年12月18日生まれ。鹿児島市出身。小学3年で競技を始め、鹿児島西高(現明桜館高)から2006年に東レアローズ入団。10年日本代表入り。バックアタックを武器に12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪出場。17年現役引退。身長176センチ。スポーツビズ所属。

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