サニックス退団「タックルの鬼」ムーア 「第二の故郷」で担当記者が見た素顔

西日本スポーツ 大窪 正一

 ラグビー日本代表は3日、アイルランドと敵地ダブリンでのテストマッチでぶつかり、31-39で惜敗した。2年前のワールドカップ(W杯)日本大会で19-12で撃破して以来の対戦。ホームでも屈辱を味わうわけにはいかない強敵の意地にやられた。

 世界を驚かせた2年前の死闘でチームトップのタックル数を記録したロックのムーアは、今回も「タックルの鬼」と化した。身長195センチは2メートル級が世界標準のロックの中で大きい部類ではないがラインアウトでも輝く。アイルランドボールを2度も奪った。

 「準備の段階から空中戦にフォーカスして練習してきた。世界一のラグビープレーヤーになるためには、タックルが必要だと考えている。タックルをさらに磨き続けたい」。試合後のコメントは向上心にあふれていた。

 W杯では全出場選手中6番目のタックル数。恐怖心はないのか。質問したことがある。すると甘いマスクを緩ませ、手で胸をたたいて、こう言った。「あれ以上の晴れ舞台はない。『何も怖くない。人生の全てをW杯にかけられるぞ』という思いだった。体重が120キロ級の大きな選手が自分に向かってくる。怖い、逃げたいと思った瞬間、相手が自分を踏みつけていってしまう」

 そんな「鋼のメンタル」を後押しするのが、トレードマークのヘッドキャップだ。試合で必ず着用する理由も聞いたことがある。「お母さんが(安全面で)安心するので」と笑った後、秘密も教えてくれた。「実は特注品。普通のヘッドキャップは1層だが、私のは特殊な違う材質の物で5層にしている。軽い脳振とうにも対応できるお気に入りです」

 W杯優勝2度のオーストラリアのブリスベン出身で、活躍の場を日本に求めて2016年にトップリーグ(TL)の東芝入り。18年に宗像サニックスへと移り、飛躍の階段を駆け上がった。「(チームの本拠地、福岡県宗像市は)生まれ育った地元に似ている」と肌に合ったことが大きい。

 趣味のサーフィンではチーム練習場近くの海がお気に入り。朝、波に乗ってから練習する日もあった。そこだけでなく、40キロ以上西の糸島まで出向くことも。食事では練習場近くのメキシコ料理店「ラホヤ(La Jolla)」がお気に入りで、タンパク質摂取など栄養面に気を配った体調管理に生かした。

 W杯後、全国に「宗像」の名を広めた市民として同市から表彰も受け、心の底から喜んでいたムーアの笑顔が忘れられない。そんな「第二の故郷」だったが、活動規模を縮小する方針のチームは6月28日、2020~21年度限りでムーアら13選手の退団を発表。「宗像サニックス」のムーアはアイルランド戦が最後だった。地元紙の担当記者としては正直寂しい。それでも彼がさらに飛躍するため、次のステージに進むのは大切なこと。代表に欠かせない存在に成長した「宗像」のムーアを、映像を通じて目に焼き付けた。(大窪正一)

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